任意の射\(f \in h^{LB} A \)を取りだすと、これに対して\(Φ_{A,B}f=g\)となるような\(g \in h^B RA \)が唯一つ存在するという随伴の定義は、図6に示すように、\(B\)から出発して\(A\)に到達する経路は二つあるが、これらは可換であると言い換えることができる。
それでは図7の右側を変形すると図8になる。ここで(1)はスタート。(2)は\(LgB\)を詳細にしたもの。(3)は\(ε: LR \rightarrow I_\mathcal{C}\)で置き換えたもの。(4)は(3)を見やすくしたものである。
逆の場合についても考えてみよう。今度は任意の射\(g \in h^B RA \)を取りだすと、これに対して\(Φ^{-1}_{A,B}g=f\)となるような\(f \in h^{LB} A \)が唯一つ存在するという場合である。図9に示すように、\(B\)から出発して\(RA\)に到達する経路は二つあるが、これらは可換である。
反変関手では、前述したように、関手によって移される射の向きが逆になる。従って上記で、2)と4)が次のように変わる。
2) \(\mathcal{C}\)のそれぞれの射\(f : X \rightarrow Y \)を\(\mathcal{D}\)の射\(F(f): F(Y) \rightarrow F(X) \)に対応させる。
4) \(\mathcal{C}\)の任意の射\(f : X \rightarrow Y, g : Y \rightarrow Z \)に対して、\(F(g \circ f) = F(f) \circ F(g) \)である。
モノイド準同型の定義:モノイドの圏\(\mathbf{Mon}\)に、二つのモノイド\(M,M'\)があり(これらは対象である)、\(M\)での射を\(a,b,c...\)とし、その合成を\(\circ\)とし、\(M'\)での合成を\(\bullet\)とし、\(M\)から\(M'\)への関手を\(F\)とする。このとき、モノイド準同型であるとは、\( F ( a \circ b \circ c ... )=F(a) \bullet F(b) \bullet F(c) ... \)が成り立つというものである。
集合\(S\)とその上の二項演算\(*: S \times S \rightarrow S\)が与えられ、単位元と結合律を満たすとき、\((S,*)\)の組をモノイド(半群)という。単位元を恒等射、集合を射とすることで、上記のように圏として構成できる。対象が一つの圏(単一対象圏)で、射も集合であることから、これは小さい圏である。また、圏のときは、\(S\)の代わりに、モノイド(Monoid)の頭文字をとってモノイド\((M,*)\)あるいはモノイド\(M\)と記されることが多い。上述の自然数での加算はモノイド\((\mathbb{N},+ )\)となる。
それでは、男女が同数であったとしよう。すなわち\(m=n\)としよう。そして私が好きと思っている人は、その人も私を好きと思ってくれている類まれなケースを考えてみよう。これを式で表すと、男子生徒\(a\)が好きな女性\(b\)は、この男子生徒を好きなので、\(g \circ f (a) = a\)となる(ここで\(b=f(a)\))。そして同じ人を好きになることはないので、任意の男子生徒\(a,a'\)に対してそれぞれが好きな女子生徒を\(b,b'\)とすると、\(b \neq b'\)である。女子側から見ると\(f \circ g (b) = b\) となる。自分自身に移す恒等関数を\(i\)とすると、それぞれ\(g \circ f = i\),\(f \circ g = i\)となる。このような写像\(f,g\)は同型写像(isomorphism)と呼ばれ、\(g = f^{-1}\)と記される。同型写像は、全単射となっていることに注意しておこう。なお同型写像であるとき、ドメインとコドメインは同型(isomorphic) であるという。構造的な差異がないということである。
最後に問題です。男子と女子の生徒数が同じであったとし、男子の方も女子の方も、全員が別々の名前を書いたとする。このとき、関数\(f,g\)を何回行ったり来たりすると元に戻るでしょうか?例えば男子\(a\)は女子\(b\)を、女子\(b\)は男子\(c\)を、男子\(c\)は女子\(d\)を、女子\(d\)は男子\(a\)を書いたとすると、\(a \rightarrow b \rightarrow c \rightarrow d \rightarrow a \)となり、2往復で戻ってくる。これは巡回群へと導くがそれについてはまた後で。