bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

トーハクで「藤原行成の書」を鑑賞する

東京国立博物館に出かけてみた。
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初めてではないのだが、入館した記憶は1965年のツタンカーメン展だけだ。もしこれが正しければなんと51年ぶりになる。『黄金のマスク』を見るために、ずいぶんと長い時間並んだことを覚えている。

週の初めに、藤原行成(こうぜい)の書が展示されていると教えて頂いた。特に、『陣定定文案(じんていさだめぶんあん)』を見逃してはいけないということであった。

藤原行成(972-1028)のことを簡単に紹介しておこう。彼は、平安中期を、藤原道長(966-1028)とともに同時代を生きた人だ(なんと二人は同じ日に亡くなった)。

このころは摂政関白時代が頂点に達した時で、道長は、長女の彰子(しょうし)を一条天皇の、次女の妍子(けんし)を三条天皇の、四女の威子(いし)を後一条天皇の中宮にし、「一家立三后」を成し遂げた。

この時代のことを彼らは日記に残している、行成は『権記』に、道長は『御堂関白記』に、そしてもう一人、藤原実資(957-1046)は『小右記』に記しているので、この当時の貴族がどのような生活をしていたかが分かる。なお、御堂関白記は現存する最古の日記としてユネスコ記録遺産に登録されている。

話を元に戻そう。行成は、当代の能書家として三蹟の一人に数えられている。今回は、行成の書と彼の書風を真似た人たちの書の展示である。行成の書として、最初に展示されていたのは、国宝『白氏誌巻』である(写真は東京国立博物館ホームページよりの複写)。
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「経師」の筆を借りて書いたので、普段とは違っており、笑わないで欲しいと注釈に書かれているとのこと。いつもの筆であればこれにも増して素晴らしいのであろう。自信作を見る機会がないのが残念である。

次に展示されていたのが、お目当ての『陣定定文案』である。

陣定は、天皇から諮問のあった事項に対して、大臣以下の公卿と四位の参議以上の議政官が論じ、見解(一致しない場合には複数)を天皇に奏上する諮問機関である。

この書は奏上するための文案を書いたものなので、行成の普段の字だろうから是非見ておくべきだいうのが、この展示を紹介してくれた方の推奨理由であった。残念ながら東京国立博物館のホームページにこの書は掲載されていないので、お見せすることはできない。展示のパンフレットを購入したので手元では見ることができるが、急いで書いているにもかかわらず立派な字である。

三番目は『書状』であった。昇進したのにお祝いに来てくれないことを責めている手紙である。手紙の最初の文字が草名(花押の一種)になっているのが面白かった(写真は東京国立博物館ホームページよりの複写)。
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2011年に『源氏物語 千年の謎』という映画があった。藤原道長紫式部が関係があったという想定のもとに、式部自身の宮廷生活と源氏物語を同時に進行させたものだ。この映画の中で、いつも書籍を読んでいる学者肌の貴族が甲本雅裕演じる藤原行成である。
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展示は一部屋であったので、30分ぐらい見た後、埴輪から浮世絵までが展示されている常設展を見て本館を後にした。

本館前の風景は
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この日は暑く、人影も少ない。門の左側に位置する表慶館
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このあたりにも人影は見られない。

だいぶ暑かったが、恩賜公園を少し散策してみた。的屋さんの屋台とはずいぶんと異なるかわいらしい屋台がいくつも並んでいて、かなりの人ごみになっている一角があった。
後で調べたのだが、芸大の学生がアートマーケットをしていたとのことである。
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アートマーケットを通り過ぎて、少し行ったところに、子供のころによく訪れた上野動物園の入り口があった。
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当時とはずいぶんと変わっているのだろうと思ったが、暑さには勝てず、そのまま通り過ぎた。

しばらく行くと、上野東照宮が修復なったという掲示があった。前に来たときは、修復中だったので、どのように変わったのかを確認したくて、入り口まで行ってみる。
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金ぴかな門になっていた。中に入って参拝するほどの興味はわかなかったので、上野駅の方に向かう。

かつては、東北、信越地方への玄関口であった上野駅中央口の様子を眺めて、
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地下鉄を利用して、帰路についた。