bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

極限-極限の定義

1.5 極限の定義

前回の記事で、インデックス圏から錐を作成する方法を示した。
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上図で、関手\(D\)によって、インデックス圏\(\mathcal{I}\)での三角形(頂点が対象、辺が射)が、圏\(\mathcal{C}\)に移され、これから作成される(三角)錐の底辺を形成する。この底辺の各頂点は\(\mathcal{I}\)の対象を、また、各辺は\(\mathcal{I}\)の射を、関手\(D\)によって、それぞれ移したものである。

また、上の図で、圏\(\mathcal{I}\)の三角形の頂点、即ち、対象の全てを、関手\(\Delta_C\)によって、一つの対象\(C\)に移した。このとき、圏\(\mathcal{I}\)の三角形の辺、即ち、射の全ては、\(\Delta_C\)によって、\(C\)での恒等射\(Id_{\Delta_C}\)に移される。

関手\(\Delta_C\)と関手\(D\)の間で、自然変換\(\alpha=\{\alpha_I,\alpha_J,\alpha_K\}\)が存在するなら、三角錐\(C,D_I,D_J,D_K\)が構成され、その側面は可換となっている。即ち、\(Df \circ \alpha_I = \alpha_J\), \(Dg \circ \alpha_J = \alpha_K\),\(Dh \circ \alpha_I = \alpha_K\)である。

同様に、関手\(\Delta_C’\)からも同じように側面が可換となっている三角錐を構成できる。

このような三角錐がいくつもできるであろう。その中で、極限と呼ばれるものを定義することにしよう。得られた三角錐の中から一つの頂点を選び、これを\(LimD\)と呼ぶことにしよう。\(LimD\)を頂点とする三角錐が次の条件を満たす時、極限という。なお、この三角錐での自然変換を\(\beta=\{\beta_I,\beta_J,\beta_K\}\)とする。

[条件] 任意の(三角)錐の頂点\(C\)に対して
1. 一意的に定まる射\(m: C \rightarrow LimD \)が存在し、
2. 圏\(\mathcal{I}\)の全ての対象\(i\)に対して、\(\beta_I \circ m = \alpha_I\)となる。即ち、上記の図の場合には、\(\beta_I \circ m = \alpha_I\),\(\beta_J \circ m = \alpha_J\),\(\beta_K \circ m = \alpha_K\)である。

説明では、理解しやすくするために、インデックス圏を三角形としたが、多角形でも構わない。さらには、辺の数が無限となった円でも構わない。

なお、このような射\(m\)は分解射(factorization)と呼ばれる。

また、\(\beta_I,\beta_J,\beta_K\)は、専門用語を用いれば、モノ射である。モノ射は次のように定義されている。射\(f:X \rightarrow Y\)がモノであるとは、任意の射\(g_1,g_2:Z \rightarrow X\)に対して、\(f \circ g_1= f \circ g_2\)であるならば、\(g_1=g_2\)が成り立つ。