bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

米田の補題 ー 集合値関手を積として表す

6.6 集合値関手を積として表す

米田の補題は次のようになっていた。局所的に小さな圏\(\mathcal{C}\)と集合の圏\(\mathcal{Set}\)、これらによって作られる関手圏\([\mathcal{C},\mathcal{Set}]\)を考える。任意の対象\(A \in \mathcal{C}\)と任意の関手\(F: \mathcal{C} \rightarrow\mathcal{Set}\)に対して、
\begin{eqnarray}
[\mathcal{C},\mathcal{Set}](\mathcal{C} (A, -),F) \simeq F(A)
\end{eqnarray}
が成り立つのが米田の補題である(\(\simeq\)は左辺と右辺が同型である、即ち、全単射であることを示す)。また、\(\mathcal{C}(A,-): \mathcal{C} \rightarrow \mathcal{Set}\)は関手であり、\([\mathcal{C},\mathcal{Set}](\mathcal{C}(A,-),F) \)は、\(\mathcal{C}(A,-)\)から\(F\)への自然変換である。
f:id:bitterharvest:20180414091504p:plain

そこで、\(F(A)\)の性質について考えることとしよう。\(F(A)\)は、\(A\)に\(F\)というコンテナで覆ったものと考えることが可能である。従って、馴染み深い積\((F,A)\)と考えてみてはどうだろうか。

\(F\)は圏\([\mathcal{C},\mathcal{Set}]\)の対象であり、\(A\)は\(\mathcal{C}\)の対象である。また、\(F(A)\)は\(\mathcal{Set}\)の対象である。従って、\(F\)と\(A\)の積から\(F(A)\)への射は
\begin{eqnarray}
[\mathcal{C},\mathcal{Set}] \times \mathcal{C} \rightarrow \mathcal{Set}
\end{eqnarray}
となる。

これを利用して、\((F,A)\)を\(F(A)\)へ移す関手を考えよう。また、\((F,A)\)から、\([\mathcal{C},\mathcal{Set}](\mathcal{C} (A, -),F)\)へ移す関手も考えてみよう。

圏\(([\mathcal{C},\mathcal{Set}] \times \mathcal{C})\)は下図のようになる。
f:id:bitterharvest:20180414092758p:plain

図には二つの対象\((F,A)\)と\((G,B)\)を設けた。そして、その間の射を\((\mu,u)\)とした。即ち、
\begin{eqnarray}
\forall X.\mu_X &:& F(X) \rightarrow G(X) \\
u&:& A \rightarrow B
\end{eqnarray}

1)関手:\((F,A),(F,B)\)から\(F(A),F(B)\)へ

それでは、圏\(([\mathcal{C},\mathcal{Set}] \times \mathcal{C})\)の対象\((F,A)\),\((G,B)\)から圏\(\mathcal{Set}\)の対象\(F(A)\),\(G(B)\)へ下図のように射を設けてみよう。
f:id:bitterharvest:20180414100141p:plain

このとき、これは関手であると考えることにしよう。このとき、\(F(A)\)から\(G(B)\)への射は、\(G(A)\)を経由しての結合射と同一になる。従って、
\begin{eqnarray}
&& F(A) \rightarrow G(B) \\
&=& F(A) \rightarrow G(A) \rightarrow G(B) \\
\mu_A &:& F(A) \rightarrow G(A) \\
G(u) &:& G(A) \rightarrow G(B)
\end{eqnarray}
より
\begin{eqnarray}
G(u) \circ \mu_A : F(A) \rightarrow G(B)
\end{eqnarray}
を得る。

また、\(F(B)\)を経由しての結合射とも同一であるので、
\begin{eqnarray}
&& F(A) \rightarrow G(B) \\
&=& F(A) \rightarrow F(B) \rightarrow G(B) \\
\mu_B &:& F(B) \rightarrow G(B) \\
F(u) &:& F(A) \rightarrow F(B)
\end{eqnarray}
より
\begin{eqnarray}
\mu_B \circ F(u) : F(A) \rightarrow G(B)
\end{eqnarray}
を得る。

これより、関手であれば、
\begin{eqnarray}
G(u) \circ \mu_A=\mu_B \circ F(u)
\end{eqnarray}
であることが分かる。可換図で示すと次のようになる。
f:id:bitterharvest:20180415113110p:plain

逆は言えるのであろうか。即ち、上の式が成り立つとき、関手となるだろうか。この証明は読者に任せる。

2)関手:\((F,A),(F,B)\)から\(( (A, -),F),((B, -),G)\)へ

それでは次に、\((F,A)\)から、\( [\mathcal{C},\mathcal{Set}](\mathcal{C} (A, -),F) \)への射を関手と考えてみよう。それには、下図を用いる。
f:id:bitterharvest:20180416095133p:plain

ところで、\([\mathcal{C},\mathcal{Set}](\mathcal{C} (A, -),F)\)と\([\mathcal{C},\mathcal{Set}](\mathcal{C} (B, -),G)\)の間の射は、上から下へだろうか、それとも下から上へであろうか。射の向きは、\({\rm Hom}\)関手が共変であるか反変であるに依存する。

一般に、合成射\(g \circ f\)を関手\(F\)によって写した時、\(F(g \circ f)= F(g) \circ F(f)\)の時、関手\(F\)を共変関手という。また、\(F(g \circ f)= F(f) \circ F(g)\)の時、関手\(F\)を反変関手という。

下図においては、関手\(\mathcal{C}(A,-)\)は、\(Sheet \ A\)のところで、
\begin{eqnarray}
f: X \rightarrow Y \\
id_A : A \rightarrow A \\
u : A \rightarrow X \\
v : A \rightarrow Y
\end{eqnarray}
とすると、
\begin{eqnarray}
v= f \circ u \\
\end{eqnarray}
となるので、共変関手である。
f:id:bitterharvest:20180416094846p:plain

これに対して、関手\(\mathcal{C}(-,A)\)は、下図のようになるので反変関手である。
f:id:bitterharvest:20180416095314p:plain

それでは、今考えている\([\mathcal{C},\mathcal{Set}](\mathcal{C} (A, -),F)\)は、\( (A, -)\)の\(A\)の部分が変わるので、反変である。さらに、\((\mathcal{C} (A, -),F)\)で、\( (A, -)\)の部分が変化するので、また、反変である。反変の反変となっているので、全体では共変となる。

従って、\([\mathcal{C},\mathcal{Set}](\mathcal{C} (A, -),F)\)と\([\mathcal{C},\mathcal{Set}](\mathcal{C} (B, -),G)\)の間の射は、下図に示すように、上から下へとなる。そこで、この射を求めることを考えよう。
f:id:bitterharvest:20180416095350p:plain

いま、圏\([\mathcal{C},\mathcal{Set}] \times \mathcal{C}\)で、対象\((F,A)\)と 対象\((G,B)\)が与えられ、その間の射は\((\mu,u)\)であったとする。即ち、
\begin{eqnarray}
\mu_X : F(X) \rightarrow G(X) \\
u: A \rightarrow B
\end{eqnarray}
である。

さらに、\(A\),\(B\)が属している圏\(C\)での任意の対象を\(X\)としよう。そして、
\begin{eqnarray}
w’: B \rightarrow X
\end{eqnarray}
であったとする。

このとき、\(w: A \rightarrow X\)とすると\(w=w’ \circ u\)となる。

次に、圏\(\mathcal{Set}\)を考えよう。\((F,A)\)が写された先は、\([\mathcal{C},\mathcal{Set}](\mathcal{C} (A, -),F)\)である。この射は自然変換なので、\(\alpha\)で表すと、次のようになる。
\begin{eqnarray}
\alpha_X: \mathcal{C}[A,X] \rightarrow F(X)
\end{eqnarray}

同様に、\([\mathcal{C},\mathcal{Set}](\mathcal{C} (B, -),G)\)を\(\beta\)とすると、
\begin{eqnarray}
\beta_X: \mathcal{C}[B,X] \rightarrow G(X)
\end{eqnarray}

それでは、この間での変換を求めてみよう。下図を参考にする。
f:id:bitterharvest:20180416095414p:plain

\( w=w’ \circ u \in \mathcal{C}(A,X)\)なので、\(\alpha_X \circ w’ \circ u \in (F(X)\)である。また、\(\mu_X:F(X) \rightarrow G(X)\)なので、\(\mu_X \circ \alpha_X \circ w’ \circ u \in (G(X)\)となる。

同様に、\( (w’:B \rightarrow X) \in \mathcal{C}(B,X)\)なので、\(\beta_X \circ w’ \in G(X)\)である。

これから
\begin{eqnarray}
\beta_X \circ w’ = \mu_X \circ \alpha_X \circ w’ \circ u
\end{eqnarray}

を得る。即ち、関手であれば、上記の式が満たされることが分かる。上記の式が満たされるとき、関手になるかどうかは、読者の方で調べて欲しい。

今回は、米田の補題と積との関連について考えたが、このように、他との関連を考えることにより、米田の補題の利用の範囲を広げることができる。永かった米田の補題の説明はこれで終了である。次回は、米田の埋め込みを説明する。