bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

随伴関手の応用 - 積としての随伴関手

8.3 積としての随伴関手

\(\mathcal{C}\)は対象\(A,B\)を有する圏とする。\(A\)と\(B\)の積は、\(A \times B\)と書かれる\(\mathcal{C}\)の対象と二つの射\(fst : A \times B \rightarrow A \)および\(snd : A \times B \rightarrow B \)との組で、以下の普遍性を満たすものをいう。
積の普遍性:任意の対象\(X\)および射の対\(p:X \rightarrow A\)および\(q:X \rightarrow B\)が与えられた時、一意的な射\(h : X \rightarrow A \times B\)が存在する。

それでは、積を随伴関手で表すことを考えよう。
f:id:bitterharvest:20180710180931p:plain

上図において、積を可換図で表したのが左側で、積を随伴関手として表したのが右側である。左側と右側の対応関係を最初に示そう。

それでは、右側が随伴関手となっていることを見ていこう。右図で、元々あった圏\(\mathcal{C}\)を右側に書き、そこには、任意の射\(X\)と、\(A\)と\(B\)の積\(A \times B\)を書き、二つの対象に対する射を\(h:X \rightarrow A \times B\)とした。また、対の圏\(\mathcal{C} \times \mathcal{C} \)を左側に書き。そこには、対象\( < X,X > \)と対象\( < A,B > \)とを書き、これに対する射を\( < p,q > : < X,X > \rightarrow < A, B > \)とした。そして、\(\mathcal{C}\)から\(\mathcal{C} \times \mathcal{C} \)への関手を\(\Delta: Y \rightarrow < Y,Y > \)とした(\(\Delta\)は対角関手(diagonal functor)と呼ばれる)。また、\(\mathcal{C} \times \mathcal{C} \)から\(\mathcal{C}\)への関手を\(Product: < Y,Z > \rightarrow Y \times Z\)とした。

さて、右図が圏論での積となっているとき、即ち、\(h\)が一意的に定まっているとき、\(\Delta\)は左随伴関手であることを、\(Product\)は右随伴関手であることを示そう。

まず、\(h\)がどのような関数であるかを見ておこう。この関数は\(p,q\)が与えられると一意に決まる関数である。そこで、Haskellで次のような関数を定義してみよう。

factorizer :: (c -> a) -> (c -> b) -> (c -> (a,b))
factorizer p q = \x -> (p x, q x)

これより、

fst . factorizer p q = p
snd factorizer p q = q

は明らかである。これより、

h = factorizer p q

を得る。さて、\(h\)が分かったところで、右図が随伴になるためには、
\begin{eqnarray}
\xi &:& \Delta \circ Product \rightarrow I_{\mathcal{C} \times \mathcal{C} } \\
\mu &:& I_\mathcal{C} \rightarrow R \circ \Delta
\end{eqnarray}
となることと示せばよい。

1)自然変換\(\xi\)が成り立つことの証明

最初に
\begin{eqnarray}
\xi &:& \Delta \circ Product \rightarrow I_{\mathcal{C} \times \mathcal{C} }
\end{eqnarray}
を示そう。

右図を90度時計回りに回転すると次の図を得る。
f:id:bitterharvest:20180710181007p:plain

\(\xi\)は自然変換であるので、成分ごとに考えればよい。このため、\(A \times B\)と\(X\)について考えればよい。

最初に、\(A \times B\)について考えてみることとしよう。\(X\)を\(A \times B\)で置き換えると下図を得る。
f:id:bitterharvest:20180710181044p:plain

このとき、\(h = id_{A \times B}\)である。これより、\( < p,q > = < fst,snd > \) で、
\begin{eqnarray}
fst (A \times B) &=& A \\
snd (A \times B) &=& B
\end{eqnarray}
である。これより、
\begin{eqnarray}
p (A \times B) &=& fst (A \times B) = A \\
q (A \times B) &=& snd (A \times B) = B
\end{eqnarray}

今得た関係を可換図で示すと下図のようになる。
f:id:bitterharvest:20180710181927p:plain
従って、
\begin{eqnarray}
\mu : I_\mathcal{C} \rightarrow R \circ \Delta
\end{eqnarray}
が成分\( < A \times B > \)については示すことができた。

次に成分\(X\)について考えてみよう。証明に用いる図は下図のようになる。
f:id:bitterharvest:20180710181109p:plain

これも、\( A \times B \)の場合と同様に証明することができる。

2)自然変換\(\mu\)が成り立つことの証明

次に
\begin{eqnarray}
\mu &:& I_\mathcal{C} \rightarrow R \circ \Delta
\end{eqnarray}
を示そう。

\(\mu\)も自然変換であるので、成分ごとに考えればよい。このため、\(A \times B\)と\(X\)について考えればよい。

最初に、\(A \times B\)について考えてみることとしよう。\(X\)を\(A \times B\)で置き換えると下図を得る。
f:id:bitterharvest:20180710191328p:plain

これは、先と同じように証明できる。

また、成分\(X\)についても同様に証明できる。

1)と2)の証明より、\(h\)が一意的に決まるとき、積を関手\(\Delta\)と関手\(Product\)を用いて下図のように表すことができ、
f:id:bitterharvest:20180710180931p:plain

そして、
\begin{eqnarray}
\mathcal{C} \times \mathcal{C}( \Delta X , < A,B > ) \simeq \mathcal{C}( X , A \times B )
\end{eqnarray}
となる。なお、\(\Delta X =< X,X > \)であり、\(Product < A,B > = A \times B\)である。これより、\(\Delta\)は左随伴関手で、\(Product\)は右随伴関手であるといえる。

逆に、\(\Delta\)は左随伴関手で、\(Product\)は右随伴関手である時、これは積を表しているということを証明しなければならないが、これについては\(h\)が一意に定まるため、自明である。

なお、圏\(\mathcal{C} \times \mathcal{C} \)は双関手\((,) \ A \ B\)により作られた圏である。