bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

家庭用のオーブンレンジでフランスパンを焼く

コロナウイルスとの戦いに対して、背反する政策が、政府と東京都から打ち出され、都民の対応は混乱したようである。自粛を求める都の政策に天気が加担したのであろうか、本来ならば東京オリンピックを迎えて輝いていたはずの4連休は、梅雨の典型的な空模様となり、旅行に向かおうとする人々の気分に水をさした。都の政策に素直に従うにしても、一日中家に引きこもっているのは、不健康で、ストレスをため込んでしまいそうである。少しでも楽しいことをと思って、先ごろから始めた生地作りをさらに一歩進めることにした。これまでに「ねじねじパン」やラザーニャに取り組んできたが、今回は難関の「フランスパン」に挑戦した。

フランスパンは、その名の通りパリ発祥で、日本のパン屋さんでもおなじみのものだ。パンの表面はとても硬く、片手で持ったとしても中折れすることはない。しかしクラム(crumb)と呼ばれるその中身は対照的に柔らかい。材料は、小麦粉、酵母、塩、水からなり、とても単純な構成であるが、その分だけ技量が問われる。これがうまく作れるようになれば、一人前のパン職人と見なされるそうだ。コロナウイルスによって与えられたあり余る時間をこの難題に充ててみようと、無謀にも試みた。

前の記事で説明したが、グルテンの多寡によって、小麦粉は強力粉と薄力粉に分けられる。グルテンは、弾力を与えるたんぱく質で、弾力を必要とするパンには強力粉が、そうではないクッキーやケーキには薄力粉が用いられる。しかし粉専門店には、これ以外に準強力粉と呼ばれる、フランスパン向きの弾力を少し抑えた小麦粉がある。

美味しいフランスパンが作れるかどうかは、グルテンの粘り強さを引き出せるかどうかにかかっている。それは、粉類を混ぜたあとでのこねる作業で手を抜かないことである。この他にも、①こねたあとの一次発酵において、時間をかけてボリュームのある生地を作ること、②二次発酵前の成型という作業で、ボリュームを維持したまま、形よくまとめることが必要とされる。

今回は、失敗を重ねた後の4度目の挑戦である。ここに至るまでに「おうちで作る一番簡単なフランスパンストレート法」「(タッパで作る熟成フランスパン)家庭のオーブンでも焼ける!パリッともっちりのバケットの作り方」「フランスパンづくりに挑戦!」などを参考にして、作り方を学んだ。低温で長時間かけて熟成するとおいしいフランスパンができるということであったが、残念なことに我が家のオーブンレンジは10年前のもので、発酵機能こそ備わっているものの、発酵温度は35℃と40℃である。最近は30℃という低温のものもあらわれ、ブログにはこれを用いるとよいと紹介されている。ここで買い替える訳にもいかないので、古くなったオーブンレンジに鞭打って、調理時間を調整し、活躍の機会を与えることにした。

材料は、準強力粉のリスドォル(200g)、水(140g)、グランドの塩(4g)、赤サフのインスタント・ドライイースト(1.4g,小匙半分程度)である。
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ボールに水を入れ、さらにリスドォルを加えて、粉っぽい所がなくなるまで、ヘラで混ぜ、室温(27℃)で30分間休ませた。このように放置する方法は、何とも恐ろしい意味を持つ単語なのだが、オートリーズ(autolyze: 自己融解)と呼ばれている。f:id:bitterharvest:20200726123558j:plain
オートリーズのあと、ボールにさらにドライイーストを加えてしっかり混ぜた。
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同じように塩を混ぜた。
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手のひらの手根(手首近くの盛り上がった部分)を使って、前方に押し出すようにして、15分間こねた。このときは、発酵しないように、室温を22℃に下げた。
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生地は薄い膜を作れるほどに粘り強くなった。
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次は一次発酵である。オーブンレンジの発酵機能を用いて、35℃で45分間の発酵を3回ほど繰り返した。発酵と発酵の間にはパンチと呼ばれる作業を加えた。詳細は次の通り。
まず、こねた粉をボールに移す。
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オーブンレンジで45分間発酵させる。
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ボールを逆さにし、発酵した粉を取り出す。
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両側から1/3のところで折り込んで生地をまとめる。このとき、生地の柔らかさをそのままにするため、押し付けてはいけない。
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ひっくり返し、裾をまとめるようにして、生地のかたちを調える。これが、ガスを抜くためのパンチ(punch)と言われるもので、かつてはパンチを食らわせるように作業したそうだ。しかし今日ではガスを抜くよりも、ボリュームを増やすことが優先されるようになり、イースト菌への空気の補充が主目的になったとのことである。
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そしてボールに移した。
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オーブンレンジで再度45分間発酵させ、取り出した。
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同様の作業をして、丸く整えた。生地の柔らかさを保つことは同じである。
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またまたボールに移した。
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3回目の発酵。時間は同じく45分間。随分と膨らんでいることが分かる。
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試しに打ち粉をつけた人差し指を差しこんでみた。指を抜いたあとの穴がそのまま保たれたので、発酵がうまくいったことを確認でき、一安心した。
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つぎは分割作業だ。お店で売っているフランスパンのように長くするのではなく、扱いやすくするために小さめのフランスパンを目指し、生地を3等分した。
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それぞれが100~110gになるようにし、きれいな部分が外側になるようにして、両側から丸め込むようにして棒状にした。長さは手のひらを少し超えるくらい。
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室温(27℃)で30分ほど休ませた。少し膨らんだことが分かる。
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次は成型。生地の一つを取り出す。
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生地の側面を伸ばして四角にし、上から1/3で折り込む。折り込んできた先が真ん中あたりに来るので、指先で軽く押し込んで、生地がまとまるようにした。
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さらに、下から1/3に対しても同じことを行った。
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真ん中から半分に折り、両端を挟んで止めるようにして生地をくっつけた。
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押すようにして転がし、棒状にした。
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クッキングシートで挟んで、上部をホッチキスで止めた。
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35℃で55分間の二次発酵を行った。クッキングシートの上部を切って生地が見えるようにし、カッターで真ん中に切れ目を入れた。
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230℃で23分間焼き上げた。
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表面はパリッとし、内部は柔らかい感触の美味しそうなフランスパンができあがった。
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フランスパンの特徴の一つは、上部に焼くときに出来上がるクープ(表面の割れ目のような模様)だが、焼き上がりを見ると綺麗とは言えない。剃刀の代わりにカッターを用いたことも原因の一つだが、家庭用の小さなオーブンレンジでは難しいとも言われているので、今回はこれで我慢しておこう。焼き上がったフランスパンは、この日の夕飯で食したところ、お店のパンにも負けないほどの美味しさであった。次の目標は、もう少し見てくれのよいフランスパンが作れるようになることである。今回はクッキングシートを用いて二次発酵前の作業をしたが、クッキングマットを購入したので、次回はこれを用いてその効果をみたいと考えている。

追:オーブンレンジの発酵時間を30℃に調整できる場合には、一次発酵での45分を1時間に、二次発酵の55分を70分にするとよい。