bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

ハワイ島・カウアイ島でのバケーション - ハワイの歴史・先史時代

今月の下旬は、留学時にホストファミリーをしてくれたご夫婦とハワイでバケーションを迎えることにしている。ハワイの歴史についてはほとんど知らないので、少し予習をしておき、彼らとの話題にしたいと思っている。とりあえず、先史時代から始めることとしよう。

最初に頭に浮かぶのは、ハワイの先住民たちが、いつごろ、どこから、やってきたのだろうかという疑問だ。最近は、古代人のDNAの研究が盛んで、考古学からは分からなかった重要な知見が知られるようになっていている。

現生人類は20万年前頃にアフリカで誕生し、およそ7万年前にアフリカ大陸を出た少数の人々が、ユーラシア大陸に拡散していく。最近の研究によれば、ヨーロッパでネアンデルタール人と、アジアでデニソワ人と交配したことが判明し、従来の考え方が覆えされている。ユーラシア大陸の端にある日本には、4~3.5万年前に到着したと考えられている。

人類が誕生して1.5万年ぐらい前までは、氷河期であり、人々はマンモスやトナカイなどの大型の獣を追いながらの狩猟採集生活をしていた。しかし、1万年前ごろになると地球は温暖化し始め、大型哺乳類は絶滅し、環境が一変する。日本では、イノシシ、鹿などの小型動物、木の実、魚・貝などを狩猟採取する縄文時代が始まるが、4大文明の地域では農業が始まる。新石器時代と呼ばれる時代から、銅、青銅、鉄を用いる新しい時代へと入っていく。

古代人のDNAを解析した最近の研究では、このような時代に人々がどのように移動したかがかなりのレベルで明確になった。研究をリードしているのは、ハーバード大学のデイビッド・ライク(David Reich)教授のグループである。

2016年には、ヨーロッパとインドでの人々の移動が解明された。それによれば、農業が始まる前は、これらの地域では狩猟採集民の人たちが生活をしていた。しかし、9000年前以降になると、アナトリア(小アジアと呼ばれる地域でトルコの大部分)とイランから、穀物を育成するという新しい技術を持った農耕民がそれぞれヨーロッパとインドへ移住を開始する。9000~4000年前にかけて、先住民であった狩猟採集民の人たちと交雑し、新たなグループを形成する。

ステップに起源 (現在のウクライナで、ヤムナヤと呼ばれる)を持ち、インド・ヨーロッパ語を話す遊牧民が、ヨーロッパ(主に北ヨーロッパ)とインド(主に北)に移動し、先住の人たちと交雑し、新しい集団を形成する。彼らは、家畜化された馬と車という移動能力に優れた道具を有していた(なお、現在のインド・ヨーロッパ語には、この時代の車に関する語彙が共通に含まれていることからヤムナヤを起源とすると考えられている)。ヨーロッパでの集団は縄目文土器文化を花咲かせ、インドでの集団は祖型北インド人となる。

その後、ステップ集団と農耕民のDNAを有するこれらの集団は、すでに定住していた農耕民(主に南ヨーロッパ南インド)の集団との間で交雑するが、その度合いは北から南へと薄まっていく。

これまでが、ヨーロッパとインドでの先史時代の人々の移動について分かったことだが、東アジアについては十分な古代人のDNAが集まっていないため、不明な部分が多いとライク教授は述べている。

しかし、次のようなことが分かっている。5万年から1万年前にかけて、狩猟採集民が、パプア人、オーストラリア人、東アジア人として移住し、さらにはアメリカに渡った。この初期の拡散で、黄河揚子江の流域で、非常に異なる集団が生まれ、それぞれが9000年前ごろまでに独自の農業を発展させた。5000年前までにあらゆる方向に拡散し、その中で、チベット語を話す集団が黄河から、オーストロネシア語、タイ=カダイ語の集団が揚子江から拡散した。オーストロネシア語を話す人々の一部は台湾に到着した。

台湾に到着した農耕民は、4000年前ごろにフィリピンに、そしてニューギニアやその東の小さな島々に到着した。3300年前以降に、ニューギニアラピタと呼ばれる様式の土器を作る人々が表れ、太平洋に広がり始める。このあと数百年かけて西ポリネシアの島々に広がり、しばらくの休止期間のあと、1200年前までには、ニュージーランドやハワイに到着した。

英語版のWikipediaには、図のような説明がある(図では、紀元が基準である)。
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1778年にイギリス人のキャプテン・クックがハワイに来航して、ヨーロッパ人との接触が始まる。この後の歴史は次回説明しよう。