bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

横浜市農村生活館みその公園『横溝屋敷』を訪れる

家にこもっての読書にもさすがに飽きてきて、毎日の散歩で行く場所よりも離れたところに行きたいという衝動にかられ、横浜市鶴見区にある古民家を訪ねてみた。東横線大倉山駅から歩いて25分の距離だが、コロナの流行が下火になったとは言えないこの時期に、電車は避けたいと躊躇し自家用車でとした。
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あらかじめパソコンで調べると、この春に開通した横浜北西線を利用すれば40分弱の場所であった。カーナビに目的地をセットして走り出したところ、16号線のバイパスを利用するようにと指示された。ここは首都圏でも最も渋滞する道として知られているところなのになぜと怪訝し、逆らってパソコンが教えてくれた北西線の入り口である青葉インターチェンジを目指して、国道246号線を東京方面に向かった。

おかしなことにカーナビは青葉インターチェンジに近づいても高速道路に乗るようには指示してこなかった。奇妙だとは思ったが、初志貫徹で高速道路に入ると、カーナビから道が消えた。新しくできた道路なのでカーナビの方が対応できていなかったのである。

新横浜を通り過ぎて横浜北線に入ったところからカーナビは再び活動を始め、岸谷生麦で降りるようにと指示してきた。行き過ぎではと思っていると、馬場という出口表示が高速道路に現れた。ここだろうと思ったが、カーナビにこの出口は表れない。仕方がないので通り過ぎて、カーナビの指定通りに岸谷生麦で降りたが、やはりかなりの回り道となってしまった。

あとで判明したのだが、馬場の出入口もこの春設置されたため、カーナビは対応していないことが判明した。出発前に分かっていれば、スマホの地図案内を利用したのにと思った次第である(ちなみにアメリカでレンタカーを利用するとカーナビはついていない。多くの人がスマホの地図案内を利用するためである)。

回り道をしたがそれでも1時間足らずで目的地の「みその公園『横溝屋敷』」に到着した。横溝屋敷は、幕末から明治時代中期に建てられた、江戸時代農村の原風景を残す建物群である。横溝家は、16世紀末の慶長年間から獅子ヶ谷村の名主を務め、代々五郎兵衛と名乗った。今昔マップで明治39年の土地利用を見ると、鶴見川に沿って水田が開けていることが分かる。横溝家は、図中の赤丸の位置にあり、谷戸への入り口に面していて、公園の名称ともなっている御園(みその)と呼ばれた一等地に住んでいたそうである。
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国立歴史民俗博物館のデータベース「旧高旧領取調帳」で調べると、獅子ヶ谷村の旧領名は久志本左京(110.8石)、小田切愛之助(199.1石)となっているので、この村は2名の旗本による相給であったことが分かる(この取調帳は幕末期頃の村落の実体を示す)。

また新編武蔵風土記稿は獅子ヶ谷村を紹介し、最後に「旧跡小田切屋敷跡」に触れている。そこには、慶長年間まで小田切美作守が久しくここに住んでいたが、江戸に召し出され、ここを知行地とした後、現在の里正(五郎兵衛)の先祖に一部を与えたと記されている。現在の横溝屋敷の場所が小田切屋敷跡という保証はないが、もしそうだとすれば屋敷の後ろの小高い丘は殿山となる。
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ちなみにこの村の人口は、文政10年(1827)38軒226人、安政2年(1855)39軒224人、明治3年(1871)42軒278人と推移した(今年1月の人口は7191人)。石高は正保年間(1645-48)244石余り、天保明治元年(1831-69)309石であった。

それでは横溝屋敷に入ってみよう。最初は屋敷への入り口となる長屋門である。背景に小高い山があり、緑に囲われた旧家であることを伝えてくれた。
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長屋門をくぐり抜けると、正面にどっしりと構えた主屋が現れた。先日の薬師池公園の永井家と比較すると、とても大きい。
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その横には蚕小屋が並んでいた。明治の初めごろにこの地方でも養蚕が盛んだったことを伺わせてくれる。
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主屋の中は、部屋は広々とし、柱は太く、明るい。住み心地は良さそうに思えた。
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主屋と蚕小屋
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外に出ると竹林、またこの時期は紫陽花が美しい。
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主屋の2階は養蚕に使われていたそうだが、今は展示室となっている。一生懸命に勉強したのだろうか、論語の本の横に和算の本が並んでおかれていた。
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この家の住人が書いたのであろうか、屋敷の風景画も、
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さらには家の模型も、
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2階から眺めた長屋門
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半夏生(はんげしょう)だろうか、庭先にあまり見かけない花を見かけた。
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買い物をする都合もあり帰路は一般道を利用したが、幸いなことに新設の道路はなく、カーナビは役に立ってくれたが、カーナビの地図更新もすでに有料になっているので、どうしたものかと思い悩んでいるところである。