bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

アデライン、100年目の恋

今回、日常的な言い回しが分かる例として利用する映画は『アデライン、100年目の恋』だ。英語のタイトルは”The age of Adaline”だ。主役はブレイク・ライブリー。2007年放送開始のテレビシリーズ『ゴシップガール』でブレイクした女優だ。恋人をマイケル・ユイスマンが務めるが、彼の父親を1942年生まれの名優のハリソン・フォードが演じる。この映画は2015年の製作なので当時73歳だ。その妻を演じるのはキャシー・ベイカー。そして、舞台は大好きなサンフランシスコだ。この街は私にとっては特別な場所だ。大学院時代を過ごしたバークレーからは湾越しにこの街を見ることができた。また、休日にはしばしば訪れたので、サンフランシスコの通りの名前が出てくるととても懐かしく感じられる。感傷に浸るのはこのくらいにして、元に戻ろう。
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年を取らずにずっと若いままでいられるというのは、人間の究極の望みだろう。しかし、もし、実際にそうなったらどうなのだろうか。自分だけは若いままで、周りの友達はどんどん年を取っていく。友達という関係を維持できるだろうか。もし、子供がいたとして、その子が成長し、やがて自分の年を追い越し、老人ホームで過ごしている子供を見舞うときどのような気分になるだろうか。年老いてしまった恋人と再会したとしたらどのように対応すればよいのだろうか。このようなことを考えさせてくれる映画だ。

女性主人公アデラインは1908年の生まれ。ゴールデンゲートブリッジの工事に携わった技術者と結婚し、女の子を得る。29歳の時、夫は工事中の事故で無くなり、アデラインも交通事故を起こす。この交通事故によって、アデラインは「DNAの電子圧縮」によって年を取らなくなる。
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誕生から数えた年齢と29歳のままの姿とに差がありすぎてトラブルが起き始める。それを避けるために10年ごとに場所と名前を変えて世間から隠れて生活するアデラインは、2015年にエリスと出会い、彼に惹かれていく。そして、アデラインは彼の実家を訪ねる。そこで彼の父親のウィリアムを紹介されるが、ウィリアムはかつて彼女の恋人であった。ウィリアムも昔の恋人そっくりの女性が目の前に表われびっくりする。アデラインは、その人はお母さんだと言い逃れをする。

その晩はウィリアムもアデラインも眠れぬ夜を過ごした。翌朝、家族全員が食卓に着いた時、ウィリアムはかつての恋人との思い出を懐かしく語り始める。しかも、どんなに魅力的で優れた女性であったかを繰り返し述べる。妻のキャシーも横で聞いている。複雑な気持ちだろうなと感じたとき、案の定、席をプイとたつ。妻の異様な行動に気がついたウィリアムは妻を追いかけて、話をする。そこでのやり取りを見てみよう。
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妻をいたわるようにウィリアムが、
W: What? Honey?
「どうしたの?」と聞く。

妻は、
K: That's enough, William.
「もう十分だわ。」という。これ以上は思い出話を聞いていられないということだろう。

妻の微妙な感情のいら立ちに出会ったウィリアムは動揺して、
W: What? What's... what's cooking?
「え、どうしちゃったの?」と聞く。思いがけず妻をいら立たせてしまったウィリアムが対応に困っている。こういう時、女性の心理が読み切れず、男性は困惑するが、そのような様子をとてもうまく演じている。

妻は、
K: What, you think this is funny?
「おかしなことだと考えているの?」と言い返す。妻の感情を読み取ってくれない夫にいら立ち、簡単な問題ではなく、深刻な問題であることを告げようとする。結婚する前とは言え、そんなにも素晴らしい女性と付き合っていたことが許せないと妻は感じている。

妻のいら立ちの原因を知ろうとしてウィリアムは尋ねる。
W: What do you mean? I'm do... What did I do?
「どういうこと?」「私が何をしたという?」

それに答えて妻は、
K: You were very close, you were very close, you said that to me twice now. And you should see your face when you talk about her. Are you going to wax nostalgic this whole god damn weekend?
「あなた方はとても仲が良かったと、とてもとても仲が、私に2回も言ったわ。彼女について語るときのあなたの顔を見るべきだわ。この週末ずっと思い出に浸ろうとでも思っているの?」と言う。ウィリアムにとっては、思いもかけない妻からの反撃だろう。

ウィリアムは自身の感じ方を伝えて分かってもらおうと努める。
W: Look, it's just that... she looks so much like her mother that... that I'm remembering things that I didn't even know I remembered.
「いいかい。彼女はお母さんにとても似ていて、忘れていたことさえよみがえってきているだけなんだよ。」

遂に、妻がありのままの感情を伝えてくれる。
K: Well, I'd hate feeling like second choice.
「そう、私が二番目の選択のように感じられて嫌なのよ。」

二人とも感情が高まってきて、ウィリアムが
W: What do you mean?
「なんだって?」というのと同時に、妻も
K: Especially this weekend.
「特に、この週末はね」という。

ウィリアムが妻の本音を理解して
W: Second choice?
「二番目の選択かい?」と聞きただす。それに答えて、

K: Yes.
「そうよ。」という。

ウィリアムが続ける。
W: Forty years, Baby, come on... Second choice? Uh-uh. Honey, you're blowing this all out of proportion.
「40年だよ。どうなってんの。二番目なんて。大げさに考えすぎだよ。」と吹っ切れたように言う。「Blow out of proportion」 は「誇張する」という慣用句である、

妻も冷静になってきて、
K: Am I?
「そうかしら。」という。

ウィリアムがすかさず、
W: Are you jealous?
「やきもち焼いているの?」と茶化す。

妻のほうもすっかり冷静さを取り戻して、
K: Yeah, as a matter of fact.
「そう、本当のところはね。」と答える。

妻の心が和んだところで、ウィリアムが優しくいたわって、
W: Look, look, it was fleeting, inconsequential. 
「よく聞いて、それはつかの間の、とるに足らないものだったよ。」という。

そして妻が、
K: Sounded like you were more than that.
「それ以上に聞こえたけど。」

ウィリアムは妻の首筋にやさしく手を当てて、
W: I love you.
「愛している。」という。

妻もすっかり気分を取り戻して、
K: I love you, too.
「私もよ。」と応じる。

この後も意外な展開があるが、結末は映画を観て楽しんでください。