bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

2024-01-01から1年間の記事一覧

横浜市歴史博物館で令和6年かながわの遺跡展を見学する

横浜市歴史博物館で、令和6年かながわの遺跡展「縄文のムラの繁栄ーかながわ縄文中期の輝きー」が開催されている。タイトルの通り、縄文時代中期の土器類が所狭しと飾られている。縄文土器が好きな人にとっては嬉しい展示である。縄文時代中期は、5,500~4,50…

東村山に国宝・正福寺千体地蔵堂を訪ねる

東京都にも国宝の建造物はあるが、二つだけと少ない。そのうちの一つは明治時代に建てられた迎賓館赤坂離宮である。国宝に指定されている(国内の)建造物はすべて江戸時代かそれ以前なので、赤坂離宮は例外的といえる。従って、残りの一つは、木造建造物では…

鎌倉で光明寺・和賀江嶋を見学

世界の情勢は不安定さを増しているが、皆が願っているような穏やかな初冬の日に、鎌倉・材木座の光明寺を訪れた。国の重要文化財である本殿(大殿)は、浄土宗が開宗されてから850年の記念事業として保存修理中であり、工事の様子が見られるということで出…

エマニュエル・トッド著『西洋の敗北』を読む

今回読んだ本を紹介しようと思って書き始めたが、書いても書いても、説明しきれないので、思い切ってものすごく短くまとめることにした。 今回の本で、エマニュエル・トッドさんは、宗教ゼロ状態という用語を新たに導入した。形式的に宗教行事に参加している…

スラヴォイ・ジジェク著『戦時から目覚めよ: 未来なき今、何をなすべきか』を読む

最近の選挙では予想外のことが時々生じるが、今回の兵庫県知事選挙は特にそうである。選挙が始まった頃は、聞いてくれる人が全くいない街頭で、候補者が一人寂しくマイクを握って演説していた。ところが、最終日には、彼の演説を聞くために、熱狂した何千人…

ジュリアーノ・ダ・エンポリ著『クレムリンの魔術師』を読む

魔術師という言葉から何を想像するだろう。指をパチンと鳴らすだけでモノを隠したり出したりと、変幻自在の芸を召せてくれるマジシャンだろうか。この本でのマジシャンはなにをしてくれるのだろう。クレムリンを操るようなすごい人について語っているのだろ…

群馬名物「ひもかわうどん」を用いた「味噌味の豚肉うどん」を料理する

友人から幅広のうどん「ひもかわうどん」をもらったので、AI(Copilot)君にレシピを教えてもらい、試してみた。AI君には、「みそ味のうどんを豚肉を入れて作りたいがレシピを教えて」と尋ねた。答えは次のようであった。美味しい味噌味の豚肉うどんを作るため…

トーハクで特別展『はにわ』を鑑賞する

選りすぐりの埴輪が出展されているとブログで見たので、興味を抱きトーハクに出かけた。連休明けの火曜日は博物館や美術館は通常は休館になるのだが、この展示だけ、この日は例外だった。多くの人は休館と思い込んでいるだろうから、混まないと予想して出か…

神奈川県立歴史博物館で特別展「仮面絢爛-中世音楽と芸能があらわす世界-」を鑑賞する

小学校に上がる前の記憶なのではっきりしないのだが、秋になると近所の神社に芝居小屋が設けられ、田舎芝居が昼から夜にかけて行われていた。近辺の人はそれぞれの家からゴザを持ち出し、空いている場所にそれを広げて鑑賞した。その頃は、テレビなどない時…

東北城柵巡りの旅 秋保温泉・磊々峡

今回の旅行の最後の宿泊地は秋保温泉である。奥州三名湯の1つとして数えられ、大和物語や拾遺集に名取の御湯と歌われた温泉である。その起源は1500年ほど前までさかのぼり、時の帝の欽明天皇が疱瘡(天然痘)に罹ったとき、治癒を祈祷したところ、奥羽秋保の温…

東北城柵巡りの旅 東北歴史博物館

多賀城跡を訪ねた後、国府多賀城駅の反対側にある博物館に寄った。遺跡に隣接しているので、その関連の遺物を紹介しているのだろうと予想したが、そうではなく、東北地方の歴史を全般的に網羅していた。写真を中心にして、紹介していこう。東北歴史博物館の…

東北城柵巡りの旅 多賀城

多賀城が創建されてから今年は1300年の節目である。これを記念して、外郭南門が復元され、いくつかの催しも予定されている。ここを有名にしているのは多賀城碑だろう。これは江戸時代初めに発見され、「壺碑(つぼのいしぶみ)」*1と呼ばれた。「奥の細道」で…

東北城柵巡りの旅 盛岡・レトロ建築

盛岡市のホームページを漁っていたら、ニューヨークタイムズ紙で「2023年に行くべき52か所」の中の2番目に盛岡が選ばれたという記事を見つけた。1位はロンドンで、その理由はチャールズ国王の戴冠式があるからとあった。では、なぜ盛岡がこの次なのだろう。…

東北城柵巡りの旅 志波城

東北城柵巡り二日目は盛岡市で、最北端にある城柵の志波城を見学することが主要な目的である。旅館からのバスが予定していた時間よりも早く角館駅に着いたので、ひとつ前の新幹線に乗れそうである。このようなとき「えきねっと」は助かる。スマホから簡単に…

東北城柵巡りの旅 角館・武家屋敷

秋田で古代の城柵を見た後で、角館で近世の武家屋敷を見学した。宿泊もこの地なので、旅館のバスが迎えに来るまで江戸時代にタイムスリップして散策を楽しんだ。駅前で荷物を旅館まで届けてくれるように手配し、ガイドマップを貰った。そこには次のように紹…

東北城柵巡りの旅 秋田城

やっと秋めいてきた時期を狙って、東北の城柵巡りをした。城柵という言葉を聞くとアラモ砦*1のような戦争のための要塞を思い浮かべてしまいがちだが、そうではなくて官庁(国の行政を行う組織)のイメージに近い。古代日本は律令制を取り入れて、朝廷・国・郡…

横浜市歴史博物館で「寳林寺・東輝庵展 横浜の禅―近世禅林のルーツ」を鑑賞する

江戸時代の中ごろ、東海道・保土ヶ谷宿近くの永田村周辺で、思いがけず禅文化が花開いた。幕末頃の保土ヶ谷宿の様子は、歌川広重の浮世絵(Wikipediaより)から知ることができる。手前の川は帷子川(かたびらがわ)で、橋は帷子橋である。江戸から旅経ち、今まさ…

宇野重規著『民主主義ってどこがいいの』を読む

民主主義の歴史は古いが、その足取りは軽やかなものではなくいばらの道で、隘路をやっと潜り抜けて、今日を迎えていると言える。将来も決して楽観することはできないが、これまでの足跡を検証して、今後に生かしていこうというのがこの本の趣旨である。冒頭…

川崎浮世絵ギャラリーで「小林清親」の浮世絵を鑑賞する

やっと暑さも和らいできたと思えるお彼岸のある日、川崎浮世絵ギャラリーを訪ねた。ここは川崎駅から至近距離のところにあり、とても便利である。決して大きなギャラリーとは言えないが、素晴らしい浮世絵を展示している場所とし好評である。この秋は小林清…

たましん美術館に企画展「浮世絵 歌川広重《名所江戸百景》」を鑑賞に行く

毎日、毎日、暑い日が続いて、あまり外に出ていく気になれないが、歌川広重の展覧会がそろそろ終わりに近づいてきたので、思い切って出かけてみた。訪れたのは、たましん美術館である。中央線の立川駅から10分程度のところにある。立川駅前は綺麗に整備され…

斎藤幸平さんの『ゼロからの『資本論』』を読む

若いころは希望の国に思えたアメリカの昨今の厳しい分断を見ていると、どこかに構造的な欠陥があるのではないかと疑いたくなる。アメリカは、資本主義と民主主義とを最良の姿で実現した国と思われていた。しかし、今日大きくそれが揺らいでいる。19世紀に資…

アインシュタインの理論に挑む

19世紀の物理学は、力学を扱うニュートンの理論と電磁気学のマクスウェル理論との間に生じた矛盾に困惑していた。これを解決したのが稀代の天才と言われるアインシュタインである。彼は光の速度は一定であるという仮説を立てて、相対性理論を確立した。今回…

周回軌道を描くためには、どれだけの速度で飛び出せばよいのか?

高校の時に出された物理の問題の中でいまだに頭に残っている課題がある。「ロケットが地球の周りを巡るようにするためには、(地上の高所から)水平方向にどれだけの速度で発射すればよいか」という問いである。ロケットの遠心力が地球からの引力と釣り合うよ…

神奈川県立歴史博物館で特別展「かながわへのまなざし」を鑑賞する

今年のように暑い夏は、冷房の効いた博物館に逃げ出すのも一つの方策である。神奈川県にあるいくつかの博物館では、なぜかペリー提督来航に関連する展示が目立った。煙を吐く黒船を見て江戸市民は肝を冷やしたはずで、この疑似体験で夏を涼しく過ごして欲し…

風にめげずに同じ位置に落下するには

今年の夏はとても暑く、家から駅へと歩く短い時間でも、かなりの体力を奪われてしまう。このため、日中は本当に必要な時以外は家から出ず、早朝の散歩だけにとどめている。しかし、お盆を過ぎると流石に朝方は涼しさが感じられるようになり、頭の体操に勤し…

お買い物計算

あるグループで雑談しているときに、インド人は2桁の掛け算ができるらしいということが話題になった。その時、「私もできるかもしれない。」という人が現れた。「お買い物計算を利用すればよいのよ。」ということだった。「試しにやってみましょうか?」とい…

沢木耕太郎著『深夜特急』を読む

友人が沢木耕太郎さんの本が面白く、すべてを近く読破しそうだと伝えてきた。私は現代作家にはあまり興味はなく、名前を聞いた程度の認識しかなかった。おそらく、三島由紀夫さんまでが限界で、それ以降の作家の本はほとんど読んだことはない。しかも、三島…

鹿毛敏夫著『世界史の中の戦国大名』を読む

いきなりだが、下の図(Wikipediaから)は、ヨーロッパ人が描いた戦国時代の日本の地図である。当時のヨーロッパ人が極東の日本に対してどのような認識を示していたかを示す貴重なもので、ここからはヨーロッパと日本の各地との交流の度合いも推察することがで…

デヴィッド・グレーバー&デヴィッド・ウェングロフ著『万物の黎明』を読む

早朝に目覚めてふとスマホの画面に目をやると、BBCのBreaking NewsでJoeが大統領選から離脱すると報じていた。13日にはDonaldに対する銃撃事件があり、短い期間に、世界の方向を変えかねない大きな事件が続いた。このような事件があるたびに、政治・経済・社…

横浜市歴史博物館で「サムライ Meets ペリー With 黒船  海を守った武士たち」を見学する

1854年という年は横浜にとっては特別な年なのだろう。この年の西暦3月31日(和歴3月3日)に日米和親条約が当時の武蔵国久良岐郡横浜村字駒形(神奈川県庁・横浜開港資料館の付近)で締結された。一寒村に過ぎない横浜が歴史的な場所になった瞬間である。条約を締…