bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

読書

藤田達生著『戦国日本の軍事革命』を読む

ウクライナへのロシアの侵攻が、多くの人々に戦争の現実を鮮明にさせてくれた。日本の戦国時代も同じように人々は戦争に明け暮れた日々を過ごしていた。そして戦国時代中頃のヨーロッパからの鉄砲伝来は、これまでの政治・経済・社会の体制に大きな変化をも…

大田由紀夫著『銭躍る東シナ海』を読む

最近になって中国や朝鮮半島との「関係」の中で、日本の歴史を論じる本が増えてきたようである。日本の歴史が孤立しているわけではないのに、隣接の地域との関連で論じない傾向にあることにずっと疑念を抱いていた。最近の流れはこれを打ち破るもので歓迎し…

早島大祐ほか『首都京都と室町幕府』を読む

一般に、歴史の本は出来事を辿りながら説明している場合が多い。室町時代であれば、観応の擾乱(1350-52)、享徳の乱(1455-83)、応仁の乱(1467-77)など、幕府を二分しての戦いを中心に描こうとするだろう。しかし出来事だけを追っていると、大きな流れを見逃し…

カルロ・ロヴェッリ著『世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論』を読む

本の副題が「美しくも過激な量子論」となっているので、量子力学について一般向けに分かりやすく説明した本だろうと勝手に思い込んで読み始めたら、期待は見事に裏切られた。アインシュタインもファインマンも理解できないと言った「不思議なことが起きる量…

辻本雅史著『江戸の学びと思想家たち』を読む

幕末から明治にかけての変革はすさまじいスピードで進行した。西洋の政治・経済・技術を取り入れてのものだが、全く異質の世界を、なぜかくも早く吸収できたのだろう。その真相を知りたくて、江戸時代の思想史をいろいろと読みあさっている中で、この本に出…

谷口雄太著『〈武家の王〉足利氏』を読む

先週の日曜日、鈴木由美さんの「中先代の乱」の講演があり、聞きに出かけた。この乱は、鎌倉幕府最後の将軍北条高時の遺児の時行が、その再興を目指して起こした乱である。鈴木さんは、このときの時行は10歳以下である、と述べられた。このような幼い子に政…

岡本裕一朗著『ポスト・ヒューマニズム テクノロジー時代の哲学入門』を読む

コロナウイルスに感染する人の数は、予想をはるかに超えて急激に減少し、多くの人は、この状態が維持されることを願っていることだろう。ところでコロナウイルスが終息したあとに訪れる世界は、起きるまえの継続なのだろうか、それともカタストロフィックに…

伊藤俊一著『荘園』を読む

伊藤俊一さんが書かれた『荘園』は高い評判を得ているようである。日本の中世の骨格をなしたのは荘園であるが、領主と農奴という単純な構造からなる西洋のそれと比較すると、土地が幾重にも権利化されいて実態を捉えにくい。また荘園に対する考え方も、かつ…

高橋哲哉著『デリダ 脱構築と正義』を読む

喉に刺さっていた魚の骨が取れた瞬間はほっとする。同じような気分を味わったのが、お彼岸のお墓参りのために、お供えの花を手に入れた瞬間だった。ジャック・デリダ(Jacques Derrida)の考え方がよくわからず、それを理解するために贈与に関係する参考資料を…

ユン・チアン著『西太后秘録 近代中国の創始者』を読む

1980年代の後半に公開された映画で、アカデミー賞9部門受賞の「ラストエンペラー」を見た人は多いことと思う。その導入部は、この映画の要約を表したものと思え、人生の浮き沈みの激しさを強烈に描き出している。清朝最後の皇帝溥儀(はくぎ)が、戦犯としてソ…

モンゴル帝国の歴史を多読、数理的な論文に

コロナウイルスは変異を繰り返し、今では感染力がとても高いデルタ株が猛威を振るっている。さらに変異を繰り返し、ワクチンが効かない変種が現れたら、困ったことに、戦いは振出しに戻ってしまう。雅な生活を送っていた平安貴族たちの前に突然武士が現れ、…

上田信著『伝統中国』を読む

グローバリゼーションによって、色々な国の人と付き合うようになった。文化が異なる人々とはそのつもりで構えるので、異質なことに出会っても気になることはない。しかし顔かたちでは区別ができず、漢字文化なので多くのことを共有していることだろうと思っ…

西谷正浩著『中世は核家族だったのか』を読む

住宅街を歩いていると、苗字が異なる表札がかかっている家が、割合に多いことに気がつく。かつての日本は、男系の直系相続だったため、異姓の親子が同居していることはまれであった。しかし近年の現象は、娘に老後の面倒を見てもらう親が多くなったため、異…

五味文彦著『武士論』を読む

緊急事態宣言のために東京国立博物館は閉鎖され、楽しみにしていた「国宝 鳥獣戯画の全て」をゴールデンウィーク中に鑑賞することはかなわなかった。幸いなことに再開されるということなので、早速チケットを入手、明日実現できることになった。擬人化された…

藤田達生著『災害とたたかう大名たち』を読む

コロナに対する戦い方は、国によってさまざまである。自由が大好きな国民たちの米国や西ヨーロッパの国々は、ロックダウンによる強い規制を敷いて国民の行動を抑えようとしたが、コロナの蔓延は防ぎきれず、最後は科学を信じてワクチン投与を早い時期に開始…

白石典之著『モンゴル帝国誕生』を読む

モンゴル系民族の歴史として、杉山さんと島田さんの著書を紹介してきた。歴史学の手法は大別して、先人たちが残してきた文献資料を丹念に調べその当時の歴史をひもといていく文献史学と、遺跡を発掘して遺物からその当時の状態を解明していく考古学とがある…

島田正郎著『契丹国』を読む

東京に出されている非常事態宣言は、大方の人が予想していた通り、ゴールデンウィークで終わるわけはなく、月末までの延長となった。さらなる延長がなければと願うばかりだが、イギリス株やら、さらに怖そうなインド株の広がりも予想され、予断を許さないよ…

虎尾達哉著『藤原冬嗣』を読む

藤原冬嗣は西暦800年の前後25年を生き抜いた。794年に平安京に遷都されたので、平安時代初期に活躍した公卿となる。父は藤原内麻呂、母は百済永継(えいけい)。母は苗字から分かるように渡来系、長男真夏と次男冬嗣を儲けた。そのあと桓武天皇の後宮に入り子…

杉山正明著『疾駆する草原の征服者』を読む

今度の日曜日から大相撲三月場所が開催される。コロナ禍の中、家に閉じこもりがちなので、楽しみにしている人も多いことだろう。この間発表された番付から幕内力士の出身地を調べてみると、42人中10人が外国出身の力士だ。率にして24%。グローバリゼーショ…

榎本渉著『僧侶と海商たちの東シナ海』を読む

面白そうな本はないかとアマゾンのブログをくくっていたら、日本史の範疇に収まりそうもないタイトルを見つけた。前回紹介した本郷恵子さんの本と同じシリーズ「選書日本中世史」の一冊として10年ほど前に刊行された。評判が良かったのだろう、昨秋、文庫版…

本郷恵子著『将軍権力の発見』を読む

室町時代はあまり人気のない時代のようだ。前後の鎌倉・戦国には傑出した人物が多いのでその陰に隠れてしまうのだろう。室町時代は足利氏が将軍家で、NHKの大河ドラマ『麒麟がくる』でも、15代将軍の義昭はかわいそうなくらいに弱々しい。最後の将軍だから仕…

坂井孝一著『源氏将軍断絶』を読む

昨年は、コロナウイルスの影響で、楽しみにしていた旅行もかなわず、「本を友にして」の生活となってしまった。ウイルスの方は、残念ながら、似たようなあるいはもっと悪い状況が続きそうで、本とはさらに仲良しになりそうだ。しかし出会った時の思い出は、…