bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

雪舟にみる室町時代の生き方

毎年恒例になっている研究会での年一回の発表をした。今回は、島尾新さんの『画僧 雪舟の素顔 天橋立に隠された謎』をベースにというよりも、この本に頼り切って、発表を行った。このため、島尾さんの著書の紹介ともいえるのだが、それでも室町時代の特徴を織り込ませながら紹介した。この時代は何と言っても、「集権から分権へ」の移行だろう。足利尊氏・直義兄弟で始まる足利幕府は、3代将軍義満の時に朝廷をも凌駕する勢力を有するようになった。しかしそれもつかの間、6代将軍義教は籤引きで選択され、最後は謀殺されるほどに権力は低下し、8代将軍義政の時は、応仁の乱が発生し、東と西に分かれて戦うだけでなく、守護大名の領国内でも戦いが起きるような状況となった。乱の終了後は、守護大名は京からそれぞれの領地に移住し、分権の時代となる。このような分権の時代においては、誰が味方で誰が敵なのかが明瞭にならず、また味方であったとしても明日には寝返るかもしれず、その逆も起こりえるので、安穏とした生活を送ることはできない。自分の力だけが頼りである。このような時代背景の中で、水墨画に長けていた雪舟が、その能力を最大限に生かして生き抜いていく様を、島尾さんの本を頼りにしながら発表した。

発表は大成功で、多くの方からとても面白く興味深い話でしたと褒められた。いつもは二次会には参加しないのだが、褒めていただいたお礼にということで、一緒させていただいた。駅前の居酒屋なのだが、人手不足が深刻なのだろう。メニューの代わりにQRコードが渡された。携帯でコードを読み込むと、メニューが出てくる。そこから酒やつまみを注文するという仕掛けになっている。我々以外は、全てが若い人達で、何の不便も感じていないようだ。我々のグループと言えば、携帯の扱いになれた人は誰だろうと探り合いながら、運悪く皆の目線が注がれた人が、不器用な手つきで携帯を操作し始めた。QRコードのことを知らなかったのだろう、その写真を撮ってずっと待っている。みんなで笑って選手交代した次の人は、メニューが出てくるところまでは進んだのだが、字が小さすぎて読むことができない。この後もいろいろな事件が続いたものの、なんとかオーダーまでこぎつけた。すると今度は、店員さんが不足していて、なかなか運ばれてこず、口に入るまでかなりの時間を費やした。スムーズに事を運んでいる若者たちを横目で見ながら、時代から取り残されつつある世代であることを嫌というほど知らされた。

発表したときの原稿は、以下の通りである。