トピックス
この秋、東京と神戸の両地で別々のゴッホ展が開催されており、ファン・ゴッホへの関心は一層高まっているように思われる。私自身も東京都美術館で「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」を鑑賞し、さらに、この展示を企画した学芸員・大橋菜津子氏による講演を…
豊洲市場は「東京の食の大動脈」とも呼ばれ、大量かつ多種多様な生鮮食料品を生産者から卸売業者へとつなぐ流通の要衝である。2019年に開場した豊洲市場は、築地市場の記憶を受け継ぎ、その役割を引き継いでいる。威勢の良い掛け声とともに行われるマグロの…
東京都公文書館の沿革 約2週間前、東京都公文書館を訪問した。ここは、都政の歴史的記録を保存・公開するために設置された専門施設であり、その前身は1952年に設置された「東京都都史編纂室」にさかのぼる。1968年10月1日には文書管理機能を統合し、「東京都…
この夏の気象変化は激しく、太陽が照れば灼熱、雨が降れば洪水と、異常気象が続く中で、都市の排水インフラの重要性を改めて実感させられる。秋雨前線が日本列島を覆うこのごろ、線状降水帯が各地で発生し、次にどこで豪雨被害が起きるかわからない不安が広…
最近ではほとんど見かけなくなったが、お盆の季節には、先祖を迎えるための風習が各地に存在していた。現在暮らしているこの地域では、どのような風習が残っているのだろうかと思い、農家を営む家を見つけては玄関先をのぞいてみた。しかし、見つけることが…
舗装道の脇や古い石塀に、まるで鉄がさびたようなオレンジ色の斑点が点々と現れるのを目にする。あまりにあちこちに見かけるので、いたずら書きとは思えず、「もしかして、これは生き物なのでは」と感じたこともあったが、それ以上立ち止まって考えることは…
ある会合で、「香を聞く」を体験をした。これは「聞香(もんこう)」と呼ばれ、日本の伝統芸道の一つ「香道(こうどう)」における中核の所作であり、香木の香りを鑑賞する行いである。ここで言う「聞く」とは、単に嗅ぐのではなく、心を澄ませて香りと向き…
町田市立国際版画美術館では、毎月第4水曜日が「シルバーデー」となっており、シニア世代にとって嬉しい日である。「日本の版画1200年」の後期展示が公開されるとのことで、今回訪問した。前期展示に続く再訪であり、前回見逃した南北朝時代から室町時代にか…
この特別展を訪れたのは、もう10日前のことになる。NHK大河ドラマ『べらぼう』の影響もあり、この展示は特に混むだろうと予想して、開幕2日目に訪れた。予想はほぼ的中し、どの作品の前にも人だかりができていた。しかし、少し待っていると隙間ができる程度…
「版画って、なに」と聞かれれば、真っ先に浮かぶのは浮世絵である。これらが生み出されたのは今から200年前の江戸の後期である。町田市の国際版画美術館での特別展は、『日本の版画1200年』となっている。さらに1000年も前なので、なぜなのだろうと興味を持…
トーハクでは大覚寺展が開催されている。テレビなどで紹介されると混雑するようになるので、それを避けるために開幕3日目に訪れた。ゆっくり見られるのではと願いながら行ったのだが、どこの展示の前にも複数人おり、淡い期待は裏切られた。それでも、しばら…
半年も前なので覚えている人は少ないだろうと思われるが、NHKの大河ドラマ『光る君』で藤原道長の子供たちが舞楽を舞うシーンがあった。一条天皇の母で道長の姉である栓子が40歳を迎えたので、その祝が催された。現在では40歳なんて若いと思われているが、短…
横浜市歴史博物館で、令和6年かながわの遺跡展「縄文のムラの繁栄ーかながわ縄文中期の輝きー」が開催されている。タイトルの通り、縄文時代中期の土器類が所狭しと飾られている。縄文土器が好きな人にとっては嬉しい展示である。縄文時代中期は、5,500~4,50…
選りすぐりの埴輪が出展されているとブログで見たので、興味を抱きトーハクに出かけた。連休明けの火曜日は博物館や美術館は通常は休館になるのだが、この展示だけ、この日は例外だった。多くの人は休館と思い込んでいるだろうから、混まないと予想して出か…
小学校に上がる前の記憶なのではっきりしないのだが、秋になると近所の神社に芝居小屋が設けられ、田舎芝居が昼から夜にかけて行われていた。近辺の人はそれぞれの家からゴザを持ち出し、空いている場所にそれを広げて鑑賞した。その頃は、テレビなどない時…
江戸時代の中ごろ、東海道・保土ヶ谷宿近くの永田村周辺で、思いがけず禅文化が花開いた。幕末頃の保土ヶ谷宿の様子は、歌川広重の浮世絵(Wikipediaより)から知ることができる。手前の川は帷子川(かたびらがわ)で、橋は帷子橋である。江戸から旅経ち、今まさ…
やっと暑さも和らいできたと思えるお彼岸のある日、川崎浮世絵ギャラリーを訪ねた。ここは川崎駅から至近距離のところにあり、とても便利である。決して大きなギャラリーとは言えないが、素晴らしい浮世絵を展示している場所とし好評である。この秋は小林清…
毎日、毎日、暑い日が続いて、あまり外に出ていく気になれないが、歌川広重の展覧会がそろそろ終わりに近づいてきたので、思い切って出かけてみた。訪れたのは、たましん美術館である。中央線の立川駅から10分程度のところにある。立川駅前は綺麗に整備され…
今年のように暑い夏は、冷房の効いた博物館に逃げ出すのも一つの方策である。神奈川県にあるいくつかの博物館では、なぜかペリー提督来航に関連する展示が目立った。煙を吐く黒船を見て江戸市民は肝を冷やしたはずで、この疑似体験で夏を涼しく過ごして欲し…
1854年という年は横浜にとっては特別な年なのだろう。この年の西暦3月31日(和歴3月3日)に日米和親条約が当時の武蔵国久良岐郡横浜村字駒形(神奈川県庁・横浜開港資料館の付近)で締結された。一寒村に過ぎない横浜が歴史的な場所になった瞬間である。条約を締…
3日に新しい日本銀行券が発行された。20年ぶりの改刷だそうで、この日は新札を求めて銀行の両替機の前には列ができたようである。私自身が新札を手にするのはしばらく後になる事だろうとあまり関心も示さないでいたら、思いがけず翌日に実物を見る機会を得た…
神奈川県立歴史博物館で「近代輸出漆器のダイナミズム」が開催されている。3月には横浜市歴史博物館で「ヨコハマの輸出工芸展」が開催された。神奈川県での主要な二つの博物館がほぼ同時に輸出工芸品を取り上げたのには何かわけがあるのだろう。横浜が開港…
鳥文斎栄之(ちょうぶんさいえいし)は、旗本出身で、10代将軍家治が逝去(天明6年(1786))し、田沼意次が老中を辞したころの時代の変わり目に本格的に活動を始めた絵師である。喜多川歌麿と拮抗して活躍したが、栄之の作品の多くは明治時代に海外に流出した。こ…
前回のブログでは国や郡の有力な初期寺院を紹介したので、今回はこれに次ぐ寺院からの出土品を中心に説明する。国分寺の造営によって仏教は地方に浸透し、8世紀から9世紀にかけては集落に隣接した場所で、仏教寺院が建立された。このようなものを「村落内…
国や郡の役所については前回のブログで記したので、ここでは国や郡に建立された有力な寺院をみていこう。ここで紹介する神奈川県内の有力な初期寺院は、国分寺、下寺尾廃寺、千代廃寺、影向寺、千葉地廃寺、宗元寺である。これまで下寺尾廃寺、影向寺、千葉…
神奈川県立歴史博物館で、律令制の時代を中心とする遺跡展が開催されている。律令制下での神奈川県は、西の地域が相模国、東が武蔵国であった。律令制では国の下部組織として郡が置かれた。相模国には8郡、武蔵国には22郡が設けられそのうちの3郡が現在の神…
横浜市歴史博物館で、ヨコハマの輸出工芸展が開催されていたので、見学に行ってきた。現在でこそ、横浜は日本を代表するような巨大都市となっているが、幕末の頃は小さな寒村に過ぎなかった。ペリー来航後に開港の地と定められると、外国人のための居留地が…
幕末から明治初めにかけては、大地が揺れ動くような大きな変化を、この時代の人たちは感じたのではないだろうか。黒船が来航したのが嘉永6年(1853)、日米和親条約が翌嘉永7年に締結された。そして安政5年(1858)には、米国・英国・フランス・ロシア・オランダ…
家からそれほど遠くないところに版画美術館がある。ここには、桜の花が綺麗な時期に、花見ついでに立ち寄ったことはある。しかし展示の内容を知って訪れたということはついぞなかった。今回、知人から楊洲周延(ようしゅうちかのぶ)の展示があり、しかも11月2…
神奈川県立歴史博物館で、こじんまりとしているが、興味を引く展示をしている。庄内藩の武士が単身赴任で江戸に出てきているときの日記である。時は幕末、世の中は攘夷・討幕と物騒であるが、イデオロギー的な話は一切なく、江戸での勤務の様子が淡々と描か…