bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

2025-01-01から1年間の記事一覧

「豊洲市場」を訪れる

豊洲市場は「東京の食の大動脈」とも呼ばれ、大量かつ多種多様な生鮮食料品を生産者から卸売業者へとつなぐ流通の要衝である。2019年に開場した豊洲市場は、築地市場の記憶を受け継ぎ、その役割を引き継いでいる。威勢の良い掛け声とともに行われるマグロの…

「東京都公文書館」を訪問して

東京都公文書館の沿革 約2週間前、東京都公文書館を訪問した。ここは、都政の歴史的記録を保存・公開するために設置された専門施設であり、その前身は1952年に設置された「東京都都史編纂室」にさかのぼる。1968年10月1日には文書管理機能を統合し、「東京都…

東京都下水道局の「有明水再生センター」を見学

この夏の気象変化は激しく、太陽が照れば灼熱、雨が降れば洪水と、異常気象が続く中で、都市の排水インフラの重要性を改めて実感させられる。秋雨前線が日本列島を覆うこのごろ、線状降水帯が各地で発生し、次にどこで豪雨被害が起きるかわからない不安が広…

佐藤雫著『言の葉は、残りて』を読む

この本は、鎌倉幕府第三代将軍・源実朝とその妻・信子の愛を主題としている。描かれるのは、武家の荒々しさではなく、王朝文化を思わせるような、雅で哀切なロマンスである。本書との出会いは、まさに偶然の産物であった。大学の図書館のオンライン検索で各…

氏家幹人著『江戸藩邸物語 戦場から街角へ』を読む

時代の変わり目にうまく対応できないと感じる人は、決して少なくない。情報社会に生きる私たちも例外ではなく、デジタル化の進展は目覚ましく、買い物ひとつとっても新しい手続きへの対応を求められる場面が頻繁にある。外食の場面でも同様で、近年では人手…

吉原散歩──憂世の幻影と浮世の光彩──

今年の大河ドラマでは、吉原を舞台に物語が展開されている。江戸の片隅にありながら、まるで都市の外縁に浮かぶ異界のようなその空間は、華やかさと悲哀が同居する特異な場所だ。画面越しに映る吉原は、贅を尽くした装飾と艶やかな衣装に彩られ、夢のように…

武蔵国多摩郡・恩田川沿いのお盆

最近ではほとんど見かけなくなったが、お盆の季節には、先祖を迎えるための風習が各地に存在していた。現在暮らしているこの地域では、どのような風習が残っているのだろうかと思い、農家を営む家を見つけては玄関先をのぞいてみた。しかし、見つけることが…

ヤニス・バルファキス著『テクノ封建制』をよむ

2012年、セルビア出身の経済学者ブランコ・ミラノヴィッチが発表した「エレファント・カーブ(象のカーブ)」は、世界に衝撃を与えた。このグラフは、1988年から2008年までの世界所得分布の変化を示したものであり、新興国の中間層の台頭と先進国の中間層の…

バーキー ・テズジャン著『第二のオスマン帝国: 近世政治進化論』を読む

ある人に勧められて『第二のオスマン帝国──近世政治進化論』を読んだ。オスマン帝国については、高校の世界史で学んだ記憶があるものの、知識としてはほとんど残っていない。本を読み返すことは滅多にしないのだが、今回は見慣れないカタカナの用語や馴染み…

地球の歴史の中で最初に上陸した植物は?

舗装道の脇や古い石塀に、まるで鉄がさびたようなオレンジ色の斑点が点々と現れるのを目にする。あまりにあちこちに見かけるので、いたずら書きとは思えず、「もしかして、これは生き物なのでは」と感じたこともあったが、それ以上立ち止まって考えることは…

聞香を楽しんだ後で、源氏香の図柄数を求める

ある会合で、「香を聞く」を体験をした。これは「聞香(もんこう)」と呼ばれ、日本の伝統芸道の一つ「香道(こうどう)」における中核の所作であり、香木の香りを鑑賞する行いである。ここで言う「聞く」とは、単に嗅ぐのではなく、心を澄ませて香りと向き…

神代植物公園を訪れる

植物の多様性について学んだあと、帰宅するのにはまだ早すぎたので、ついでと言ってはなんだか、植物園を見学した。園内では、菖翁生誕250年企画「薫風に香る江戸の華~はなしょうぶ」が開催されていた。江戸時代中期、旗本の松平定朝(さだとも)がハナショ…

神代植物公園・生物多様性センターを訪れる

東京も梅雨に入ったと伝えられた日に、調布市にある神代植物公園を訪れた。とはいっても、ここのメインであるバラ園ではなく、伊豆諸島の草木を調べるためであった。島は誕生した場所によって、大陸島か海洋島に区分される。大陸棚の上にある島を大陸島とい…

町田市立国際版画美術館で『日本の版画1200年』の後期展示を鑑賞する

町田市立国際版画美術館では、毎月第4水曜日が「シルバーデー」となっており、シニア世代にとって嬉しい日である。「日本の版画1200年」の後期展示が公開されるとのことで、今回訪問した。前期展示に続く再訪であり、前回見逃した南北朝時代から室町時代にか…

上野の森美術館で『五大浮世絵師展』を鑑賞する

この特別展を訪れたのは、もう10日前のことになる。NHK大河ドラマ『べらぼう』の影響もあり、この展示は特に混むだろうと予想して、開幕2日目に訪れた。予想はほぼ的中し、どの作品の前にも人だかりができていた。しかし、少し待っていると隙間ができる程度…

アジサイが咲き始めの円覚寺を訪れる

かつては学芸員として活躍され、今も歴史遺産を精力的に紹介し、その情熱からは老いを感じさせない方に案内されて、久しぶりに鎌倉の円覚寺を訪れた。この寺院は鎌倉時代後期の弘安5年(1282)、第8代執権・北条時宗によって創建された臨済宗の寺院で、鎌倉五…

会田弘継著『それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史』を読む

本書のタイトルからは、大衆向けの本のような印象を受けるかもしれない。しかし、実際には後半の内容こそが本来の趣旨であり、学術書に近い構成となっている。特に、アメリカの現在の政治と思想を理解するうえで有意義な一冊である。最近、ドナルド・トラン…

ジョージアのワインと料理を楽しむ

ジョージアのワインジョージアワインの本を読んだことで、ワインと料理に関する知識を深める貴重な機会を得た。そこで、他の資料も参考にしながらまとめてみた。ジョージアがワイン発祥の地のようである。その歴史は約8,000年前にまでさかのぼり、現在もクヴ…

「金目鯛の姿煮」を料理する

最近は訪れる機会が減ってしまったが、伊豆によく足を運んでいた頃は、定食屋を探しては金目鯛の煮つけを楽しんでいた。東京のレストランで金目鯛を食べようとすると、値段が高く感じられ、この頃はなかなか口にする機会がなかった。そんな折、孫たちから「…

ジョエル・コトキン著『新しい封建制がやってくる―グローバル中流階級への警告』を読む

なんとも古めかしく、それでいて刺激的なタイトルの本だろう。かつては「封建的なオヤジ」という言葉もあったが、今はそれも死語になってしまった。封建的といわれても、それがどういうものであるかを感覚的に知っている人は少なくなってしまった。日本の社…

町田市立国際版画美術館で『日本の版画1200年』を鑑賞する

「版画って、なに」と聞かれれば、真っ先に浮かぶのは浮世絵である。これらが生み出されたのは今から200年前の江戸の後期である。町田市の国際版画美術館での特別展は、『日本の版画1200年』となっている。さらに1000年も前なので、なぜなのだろうと興味を持…

中野剛志著『政策の哲学』をよむ

アメリカトランプ大統領の相互関税の発表は、世界の株式市場に大きな影響を及ぼし、世界恐慌を招くのではないかとの危惧も抱かせている。今回の政策のベースとなっているのは、おそらく、スティーブン・ミラン氏が2024年11月に発表したマールアラーゴ合意で…

コロナに罹りました

今日はエープリルフールだけれども、この記事はフェイクではない。真実である。しかし、エープリルフールのこの日の記事にとてもかなっているように思える。最初の一言が、「え、ほんと!」となるだろうから。楽しかった中国・四国の旅行から戻った二日目、…

中国・四国を旅行するー小豆島

後半の旅行先は小豆島。この島は瀬戸内海にある島々の一つで、淡路島に次ぐ大きさである。香川県に属し、人口は2.6万人弱と多くない。昭和30年代には5万人ぐらいだったので、半分程度になっている。主要な産業は、オリーブ栽培、醤油醸造、手延べソーメン、…

中国・四国を旅行するー広島

今年の3月は気候の変化が激しく、寒かったり暑かったり晴れだったり雨だったりと、旅行は運まかせである。何が幸いしたのか今回はとてもついていて日和に恵まれた。目的は前後で分かれていて、前半は広島の友達を訪ねること、後半は大学時代の友人たちと小豆…

藤井一至著『土と生命の46億年史 土と進化の謎に迫る』を読む

土というタイトルを見たとき、あまり期待しなかった。空気や水と同じように身近な存在であるにもかかわらず、都市生活に馴染んでしまった私は、土に触れる機会はあまりない。外に出かける時は、舗装された道を歩くので、土のあの柔らかい感触を味わうことは…

左足の疼痛と闘う

20日ぐらい前になるが、目覚めたとき左足がなんとなく重いように感じられた。歩くと痛みを感じる。この日は、オーストラリア人の夫妻と15年ぶりに会うことになっている。娘さんを伴って、3週間の日本旅行を楽しんでいる最中である。何の前触れもなく、長野…

細見和之著『フランクフルト学派 ホルクハイマー、アドルノから21世紀の「批判理論」へ』を読む

なぜ、人間は戦争をするのだろう。20世紀が終わる頃、資本主義陣営と共産主義陣営の間で繰り広げられた冷戦はソ連の崩壊によって終了した。これによって、世界に民主主義が広く行き渡り、平和を享受できる時代が迎えられると夢を抱かさせてくれた。しかし、…

田中史生編『日中関係史』を読む

日本と中国との関係は、世界の歴史の中でも最も長く続いている二国間関係の一つだろう。『後漢書』には、後漢の光武帝が朝貢してきた「倭の奴の国」に「印・綬」を与えた(西暦57年)という記載がある。そして、これに符合するとされる金印は、江戸時代に博…

田口善弘著「知能とは何か」を読む

高校生の頃、物理は悩ましい科目だった。授業で出てくる式がなぜ正しいのかが理解できず悩んだ。まるで、神の啓示でもあるかのように提示されるので、何も考えずに受け入れなければならないように感じ、それに反抗する感情さえ生まれた。半世紀以上も経って…