bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

ビフォア・サンセット(Before Sunset)-9年後の再開

ビフォア・サンセットは、恋人までの距離(Before Sunrise)の続編で、9年後に作られた。
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前作で、イーサン・ホークが演ずるアメリカ人青年ジェシーと、ジュリー・デルビーが演ずるフランス人女性セリーヌは、ブタペストからウィーンに向かう国際列車の中で出会う。ジェシーは次の日にウィーンからアメリカに帰国し、セリーヌはこの列車でそのままパリに帰ろうとしている。ウィーン中央駅に着いたときに、この街を一緒に散策しないかとジェシーセリーヌを誘う。意気投合した二人は、ウィーンの街を歩きながらひたすら会話を続ける。夜が明けて、パリに向かうセリーヌジェシーはウィーン中央駅で見送る。その時、二人は6か月後に再びこの場所で会おうと約束する。ここまでが前作のあらすじだ。

ウィーンで別れてから9年の歳月がたち、ジェシーはウィーンでのエリーヌとのロマンスを題材にして小説を書く。この小説のプロモーションのために、ジェシーはパリの書店で開催されたワークショップで作者として講演する。
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講演が終わろうとする頃、思いがけずエリーヌが入ってくる。
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ジェシーはその日の便で帰国しなければならないため、あまり時間が残されていない。それでも、コーヒーでも飲もうということで二人はカフェに向かう。前回と同様に、会話がずっと続く。その中で、再開を約束した場所に来たのかが話題になる。セリーヌジェシーが来なかったものと思いこんでいる。いや、そうあってほしいと思っている。セリーヌはブタペストのおばあさんが亡くなり、再会を約束したその日に埋葬されたので、とても残念だったが行くことはできなかったと自身の理由を説明する。さらに、でもあなたも来なかったのよねと言い、それには特別の理由があったはずだわと言ったあと、彼の表情を読み取って続ける。

“Oh...no! No, you were there, weren't you?”
「え、うそ。来たのね。そうでしょ。」

セリーヌはさらに慌てて、
“Oh, no, that's terrible!”
「それは大変だわ。」

心の動揺を抑えきれずに、
“I know I'm laughing, but I don't mean it!”
「笑ってるけど、そのつもりではないの。」

さらに続けて、
“Did you hate me? You must have hated me. Have you been hating me all this time? You have!”
「私のこと嫌ったでしょう。嫌いだったに違いない。私のことずっと嫌いだったでしょう。間違いないでしょう。」

ジェシーは、少し楽しみながら、否定する。
“No, no...”
「そんなことはないよ。」

セリーヌは慌てている様子を隠さずに、
“Yes, you have! Oh, but you can't hate me now, right? I mean, my grandma...”
「嫌ってたわよ。でも、今は嫌えないわよ。だって、おばあさんが…。」

ジェシーは会話を楽しみながら、
“I don't hate you, alright? Come on, it's no big deal, alright? I flew all the way over there, you blew the thing off, and then my life has been a big nosedive since then, but I mean it's not a problem.”
「嫌ってないよ。だって、大したことではないもの。再開を約束した場所へはるばると飛んできたんだ。そして、あなたが全てをぶち壊してくれた。それ以来、私の人生は急降下しているよ。でも、問題という訳ではないよ。」

セリーヌが本当に悪いことをしたという気持ちになって、
“No, you can't say that!”
「そんなこと言わないで。」

さらに続けて、
“Oh, I can't believe it, you must have been so angry with me... I'm so sorry, I really wanted to be there, more than anything in the world! I swear...Honestly, I swear...I mean, you can't be angry...my grandmother...”
「信じられないわ。あなたはずっと私に対して怒っているでしょう。本当にごめんなさい。世界中のどのようなことよりも優先して、そこに行けたらと本当に思っていたの。誓ってよ。本当に、誓ってよ。あなたは怒ってはいけないわ。だって、おばあさんが..。」

ジェシーはちょっと行き過ぎたかなともって、
“No, I know, I know, I honestly thought that something like that might have happened. I was definitely bummed, but...Mostly, I was just mad we hadn't exchanged any phone numbers or any information.”
「分かっているよ。そのようなことが起こったのだろうと本当に思ったよ。確かに落ち込んだよ。なぜ、電話番号か連絡先を交換しなかったのだろうととても悔やんだよ。」

40秒という短い会話だが、再会を果たせなかったことをお互いにとても悔やんでいる様子がこの会話に凝縮されている。二人はこのあと、もし再会できていたら人生は変わっていただろうと思いながら会話を続けていく。

さて、ジェシーは何事もなく帰国できただろうか。

この映画、軽快に会話がずっと続く。でも、一語一語しっかり聞こうとすると、会話にスピードがあってちゃんと把握するのが大変だということに気がつく。会話のリズムが心地よい映画だと納得する。

また、会話の部分には、'hate'という単語を、過去形、現在完了形、現在形に使い分けて、言い訳をしている。弁解をするときはこのようにしたらよいのだなととても参考になる。