bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

新鮮なビーツでボルシチを饗する

散歩のコースを少し外れたところにJA横浜があることは知っていたが、地元の農家の方々が丹精込めて作った野菜を販売していることを知ったのは、春先だった。それ以来ときどき立ち寄っては、珍しい野菜を手に入れて、サラダや炒め物などを作って楽しんだ。一昨日も、少し暑い中を散歩していたので、涼を取ることを目的に、あまり期待しないで立ち寄ってみた。

今の時期は、実はトマトがおいしい。特に「桃太郎ファイト」という品種が優れている。何人かの生産者が出品し、味を競っているのも気に入っている要因の一つだ。この日もいくつかは試食できるようになっていた。何人もの人が口に運んでいたが、割り込んで仲間に入ることには気後れを感じた。このため前回購入し美味であった生産者のトマトを選び、買い物かごに一袋入れた。梅雨時の鬱陶しさを忘れさせてくれる、清々しい生の味を楽しむためにだ。

精算所に向かおうと思って、他のテーブルに目を移したとき、隅の方に珍しい根野菜を発見した。見慣れない濃紅色の丸い根が目に飛び込んできた。ずっと前から入手したいと思っていたビーツではないかと期待を込めて近づいたところ、まぎれもなくそうであった。二袋しか出品されていないが、このような機会が訪れることはないかもしれないという心配が先に立って、大きい球の方を購入した。

20年近くも前になる。同僚のロシア人の家に招かれたとき、奥さん手作りのボルシチをご馳走になった。とても美味しい味だったので、そのときから是非一度作ってみたいと思っていたのだが、ビーツを見つける機会がなく、希望を果たせないまま今日に至ってしまった。とても長いこと待ち望んでいたので、是非もない買い物だった。
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買い物かごに入れたあとで、周囲を見渡すと、すぐ近くにスイスチャードがあった。柄の部分がきれいな色の野菜で、今回は濃いピンク色のものはなかったが、黄と薄ピンクと白のものがあったので、サラダや炒め物にしようと思い一緒に入手した。
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昨日(28日)は、早速ビーツを用いて長年の希望であったボルシチを作った。

材料の主役はもちろんビーツ。少し多めかなと思ったが、買ってきたビーツをすべて使った。大きな球と小さな球だ。その他の野菜は根野菜を中心に好きなものを加えればよいが、今回は、玉ねぎ(1個)、じゃがいもぎ(1個)、にんじん(1個)、キャベツ(8分の1玉程度、使っている最中のキャベツがあったので、写真のキャベツの4分の1程度を使った)を使った。

肉は、和牛だと煮たときに固くなってしまうので、オーストラリア産のブロック肉(300g)を用いた。こちらの肉の方が経済的なのももう一つの理由だ(同じ量だと和牛は1000円も高かった)。さらに味付け用だが、ホールトマト(半缶)、パセリ少々、ローリエ(1枚)、サワークリームだ。その他に、オリーブオイル(大匙2杯)、バター(20g)、マギーブイヨン(3個)、ニンニク(練ったもの小匙1杯)、塩(小匙1杯)、黒コショウだ。
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最初は野菜の処理だ。にんじんの頭と尻を落として、3等分に分割した。さらに頭の方は8等分に、尻の方は3等分、真ん中は6等分と、大きさがそろうようにシャトー切りにした。ただしお客さんに出すわけではないので、合理性を加味して、皮をむくのも角を取るのも省略。
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ニンジンの大きさが定まったので、他の野菜はこれと同じような大きさになるようにする。玉ねぎをくし切りにする。そして皮をむいてジャガイモを用意する。但し、ジャガイモは量があった方が好きなので、少し大きめに乱切りにした。
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キャベツはニンジンの長さと同じ長さになるように切った。何切りというのだろう。形に合わせて切ったとしか言いようがない。
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ビーツは、カブと同じ要領で、少し厚めに薄切りにした。
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肉は、カレー用に切られているものと同じ大きさになるように切断した。
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鍋に、オリーブオイル(大さじ1杯)とバター(20g)を入れ、
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肉を加え、
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色が変化するまで、炒めた。
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さらにオリーブオイル(大匙1杯)と練ったニンニク(小匙1杯)を加え、そして野菜を加え、
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オリーブオイルが野菜に回るように炒めた。
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次に、水(700cc)、ホールトマト(半缶)、マギーブイヨン(3個)を加え、
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沸騰させ、
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その後、弱火で30分程ごとごと煮て、塩と黒コショウで味を調えた。

待ち望んだ、赤いスープの出来上がりだ。お皿に盛って、パセリとサワークリームを加えて、供した。
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ビーツはカブの一種なので、味もカブに似ているが、少し土っぽいという感じを受けた。今回作ったボルシチは、荒涼とした大地のなかで、寒い中を生き抜いてきた力強さを持ち、ロシアという異郷を感じさせてくれる、庶民的な料理だった。
手元には、近頃、店頭で目立っている安価なチリ産の赤ワインしかなかったので、期待しないで一緒に飲食したのだが、幸いな方向に期待が外れて、粗削りな味ともマッチして、美味しかった。