bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

クアラルンプール

8月23日から28日まで、国際会議で、クアラルンプールを訪問した。

マレーシアに対しては、452メートルの高さを誇るペトロナス・ツインタワーを建設できるまでになった経済成長と、この国から日本に留学してくる学生がとても穏やかであるという印象を出発前に抱いていた。

マレーシアの訪問は二回目だが、前回はマラッカだったので、首都のマレーシアを訪れるのは初めてである。東京とクアラルンプールの間は、日本航空全日空、マレーシア航空が運航している(そのほかにLCCエアアジア)。

航空券の値段にもかなりの格差があって、同じ日本航空でも、機材が日本航空の場合とマレーシア航空(共同運航)の場合では、3倍程度の差がある。機材がマレーシア航空の場合のほうが往復ともに昼間の便になるので、体には優しい。しかし、北京に向かった便が行方不明になっていたり、ウクライナで撃ち落とされるという大きな事件が、昨年度、マレーシア航空には起きている。三度目にめぐりあっても嫌なので、帰りの便は夜間になるが、今回は、往復とも日本航空の機材の便を利用した。

日本航空の便は、かつては空席が目立つ便が少なからずあり、そのような便に合うとLuckyと思ったものだが、再建後はどの便も満席かそれに近い状態で、隣が空席という機会はほとんどなくなった。今回も、往復便とも満席であった。往きの便は昼間の便ということもあり、老夫婦の旅行者がある程度見受けられたが、帰りの便はほとんどがビジネスマンのようであった。金曜日の夜行便ということもあり、仕事を終えての帰り客が多かったものと思われる。聞くともなしに入ってくる会話も仕事の話が多く、「工程管理を全く理解していない」など、現地の工場に対する不満を知ることとなった。

マレーシアの人口は2800万人。面積が日本のおよそ90%であることを考えると、人口密度は高くはない。国立博物館で、マレーシアの独立当時の映画が放映されていた。それによれば、マレーシアの独立は1957年8月31日である。独立にあたって、当時の領主国である英国から突き付けられた条件は「統一」である。マレーシアは、民族的には、マレー人、中国人、インド人、その他の小民族で構成される多民族国家である。植民地時代は、民族ごとに別々の職業についていたため、国としての統一性はなかった。英国の懸念は民族間の対立であったと思われる。映画では、統一という言葉をマレー語で繰り返し用いていたが、残念ながら覚えることができなかった。この映画は老人が3人の小学生に語るという設定になっていたが、統一のおかげで、みんなが学校教育を受けられるようになったというのが印象的であった。それより前の世代は満足な教育を受けていなかったということになる。

マレーシアは多民族国家だが、そのような国家でありがちな民族間での衝突もなく、とても平和である。マレー人が人口の6割強を占める。彼らの宗教はイスラム教であるが、他のイスラム国と比較すると、平和という点で際立っている。マレーシア独立の時の統一がその後もうまく機能しているのだろう。

マレーシアの国民は親切だが、今回の経験をいくつか挙げておく。

ペトロナス・ツインで食事をして店から出てきたとき、荷物を手から手に移しているときに、気が付かないうちに小銭入れを落としてしまった。この瞬間、前を歩いていたご婦人が、"Excuse me."と言って床を指してくれた。海外でこのような経験は初めてした。

次は、国立博物館からの帰り道、中央駅から国立博物館に抜ける地下道を建設中の作業員が話しかけてきた。何しに来たのとたわいもない話をしたのだが、最後に、私を日本に連れて行って欲しいと何度も頼まれた。冗談で言っているのだろうが、変なことに巻き込まれても嫌なので、話を切り上げて立ち去った。

最後は、会議場から駅に行く通路での話。エレベータを降りているときに、一つ前の階段にいる男性が話しかけてきた。「お会いしましたね。」と言ってきたので、覚えはないのだがと思っていると、「会議のスタッフをしていたので、朝、会いました。」と言われた。いなかったように思ったのだが、間違っているかもしれないと思って、当たり障りのない話を続けていると、彼が「明日も7時から19時まで働かなければいけない。」と言ってきた。困ったことに、バイクが壊れてしまって、あそこにあるという話になった。それは大変だねというようなことを言うと、近くに修理屋があって交換の部品を買うつもりだといった。「今、お金の持ち合わせがないので、明日必ず返すから、貸してもらえないか?」という話になった。日本でも振り込め詐欺の話は問題になっているが、ここまで、彼の話を疑ってはいなかった。ただ、海外にいるときは、人前では、絶対に財布を出さないということにしているので、「残念ながら、お金は貸せない」といった。詐欺とはまだ思っていなかったのだが、これまでの習慣で受け付けることができなかったので、難を逃れることができた。彼と別れてしばらくたって、あれは詐欺なのだろうと理解した。そのあと、帰りにもう一度この通路を通ることになるのだが、彼はまだそこで仕事をしていた。"Hi!"といって手を振ってあげると、彼もにこりと笑って返してきた。彼に後ろめたさはないのだろう。

最後は英語の話。地下鉄やバスに乗っているときに、若い人たちは、自分たちの言葉(マレー語や中国語)ではなく、英語で会話をしていることに気が付いた。学校教育がそうなっているのか、あるいは、ビジネスでは英語を使わざるを得ないのかだと思うが、なまりのない英語を話しているのには感心した。マレーシアの人口構成はピラミッドに近い。とても、若い国だといっていい。英語を自由にこなせる若者たちによって、かつての日本と同じように、経済的な飛躍を遂げることだろう。2020年に先進国入りすることを目標にしているとのことである。

写真はあまりとらなかったが、いくつか、載せておく。

有名なペトロナス・ツインタワー
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タワーの中
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ただで乗車できるGO KL。4系列で市内をカバーしているので、便利。
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国立博物館の外
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博物館の中。サルタンの妃の衣装。
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