bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

イラストが楽しい幕末の日記を見に行く

神奈川県立歴史博物館で、こじんまりとしているが、興味を引く展示をしている。庄内藩の武士が単身赴任で江戸に出てきているときの日記である。時は幕末、世の中は攘夷・討幕と物騒であるが、イデオロギー的な話は一切なく、江戸での勤務の様子が淡々と描かれている。文章だけだとそれほど面白くはないのだが、そこに描かれているイラストが漫画チックで、それを観ていると楽しくなる。

日記を書いたのは松平酒造助で、家禄1400石の上級藩士庄内藩は、徳川四天王の一人の酒井忠次を始祖とする譜代の名門で、14万石。酒造助は、江戸市中取締役を指揮する組頭として、酒造助組の25名を率いて出府した。それではイラストを見て行こう。

町に繰り出して、皆でスイカ割り。スイカを担いで深川の大門を出るところ。この時代の庶民や武士の姿が描かれ、この辺りはとても賑やかだったことが手に取るようにわかる。

海水浴に行ったときにスイカ割りをしたことはあるが、橋の上で、しかも他の人を排除して、刀で割るとは。特権の活かし過ぎでは。
王子に投網(魚とり)に繰り出し、道すがら酒や油揚げを頂戴。鳥や魚を取ることは彼らの道楽だったが、道すがら酒盛りを始めたようだ。

上野向島にお花見。自由奔放に、享楽的に、江戸の人々は桜を楽しんだ。

吉原見学。真ん中の黒い着物が酒造助。生真面目な酒造助は、何を思って歩いたことだろう。

普段の生活。


酒造助は最新の鉄砲が勝敗を決することに気がつき、自費でたくさん購入した。彼には先見性があった。


ブランケットにくるまって睡眠中。このころにはすでに毛布が使われていたようである。

ハエたたき。江戸の町にはうるさいぐらいにたくさんいたようで、とても苦労した。

1本のカステラを4つに切って、一気食い。さぞかしや美味しかったことだろう。

お正月に御具足餅を頂く。2番目の上席にいるのが酒造助。

一通り見たあと、最寄り駅の桜木町の近くの大岡川沿いの桜を見学に行った。こちらの客は、時々声が聞こえるぐらいで、散策を楽しみながら、静かに愛でていた。大騒ぎをしながら、桜もそっちのけで、羽目を外す景色は、過去のものとなってしまったようである。


大岡川に浮かぶ日本丸。全長110m。黒船のサスケハナは78m。酒造助は、戊辰戦争の前年に、35歳で亡くなっている。もしも長生きしていれば、彼の先見性が活かされたのではないかと、惜しまれている。

研究成果報告書が、神奈川県立歴史博物館のホームページにあり、日記とイラストの全てを見ることができるので、参考にされるとよいと思う。