bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

随伴関手の応用 - モナドとしての随伴関手

8.7 モナドとしての随伴関手

今回は、随伴からモナドが導き出されることを示そう。

二つの局所的に小さな圏\(\mathcal{C},\mathcal{D}\)において、関手の対\(R: \mathcal{C} \rightarrow \mathcal{D}, L: \mathcal{D} \rightarrow \mathcal{C}\)が次の条件を満たす時、随伴であった。

\begin{eqnarray}
η & :& I_\mathcal{D} \rightarrow R \circ L \\
ϵ &:& L \circ R \rightarrow I_\mathcal{C}
\end{eqnarray}

モナドであるための条件は、\(return\)と\(join\)という関数を有することである。すなわち、
\begin{eqnarray}
return & :& A \rightarrow M (A) \\
join & :& M (M (A)) \rightarrow M(A)
\end{eqnarray}
を満たすことである。

それでは、\(η\)から\(return\)が得られることを示そう。

\( M=R \circ L \)とすると、
\begin{eqnarray}
A = I_\mathcal{D} (A)
\end{eqnarray}
\(η : I_\mathcal{D} \rightarrow R \circ L\)を用いると
\begin{eqnarray}
&\rightarrow& R \circ L (A) \\
&=& M (A) \\
\end{eqnarray}
より
\begin{eqnarray}
return : A \rightarrow M (A)
\end{eqnarray}
が得られる。

次に、\(ϵ\)から\(join\)が得られることを示そう。
\begin{eqnarray}
M (M (A)) = R \circ L \circ R \circ L (A)
\end{eqnarray}
\(ϵ : L \circ R \rightarrow I_\mathcal{C}\)を用いると
\begin{eqnarray}
&\rightarrow& R \circ I_\mathcal{C} \circ L (A) \\
&=& R \circ L (A) \\
&=& M (A)
\end{eqnarray}
より
\begin{eqnarray}
join : M (M (A)) \rightarrow M(A)
\end{eqnarray}
が得られる。

なお、このようにして得られたモナドに対して、結合律と単位律が満たされることを示さなければならない。単位律は随伴のいわゆる三角恒等式から得られるが、これについては、後の記事で説明する。また、結合律については、\(ϵ\)を用いて式を展開することで得られるがこれについても一緒に後の記事で説明する。

これより、全ての随伴はモナドを導き出すことが分かる。これはコモナドについても言える。

また、逆に全てのモナド(コモナド)は随伴から導き出されると言える。