bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

量子力学の世界を垣間見る(7):シュレディンガー方程式

昨日(9月22日)は、中学時代の同級生と大相撲秋場所を見に行った。
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横綱昇進がかかっていた稀勢の里が、前の日に敗れて3敗を喫したため、今場所の興味が薄れてしまった直後の観戦となった。他方で、先場所、休場した豪栄道が、信じられないほどの充実した相撲を取り続け、初めての優勝を勝ち取れるのかという方に興味が移ってきた日でもあった。

相撲の観戦は初めてではない。30年前に数回訪れたことはあるが、枡席が狭かったことが印象に残っている。週の初めごろから、何となく腰が重いので、あの狭いところに座るのはつらいだろうなと思い続けていたが、観戦の2日前にその対策をブログで調べていたら、アウトドア用のチェアマットがよいというのを見つけたので早速購入して、この日に備えた。
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席に着くときに、お茶屋さんが隣の席は来ないようなので、使っても大丈夫でしょうというので、連続した枡席で、それぞれ2名のゆったりした空間で、直前に入手したチェアマットを利用するまでもなく、3段目からの相撲を楽しみ始めた。十両の相撲に入ったころに、お茶屋さんの勘違いだったようで、我々が占拠している席の正規のお客さんが出現した。我々は、お茶屋さんが大丈夫だといっていたなどとぶつぶつ言いながら、狭い枡席に4人を詰め込む羽目になった。これが当たり前の状態なのだが、直前までの自由な空間と比較すると、身動きができないほど狭い。

チェアマットを利用したのだが、後ろの人にぶつかりそうになるので、その機能を生かすことができない。幸い、席の前は通路になっていた。人っ子一人通れるほどの狭い通路なのだが、通行人がいない時を見計らって、通路に足を投げ出して少しでも腰と足に負担がかからないように心掛けた。後ろに座って、あぐらをかいていた同級生の一人は、途中で足がつってしまい、痛い痛いと騒いでいた。また、前の方に座ったもう一人は、僕と同じように足を通路に投げ出している時、通行人にわざと踏まれたようで、こちらも不要な痛みをもらうこととなった。

行事や呼び出しの衣装はその階級によって変わってゆく。三段目あたりでは、裸足で、脛も露出している。いかにも使いぱっしりの小僧という感じだ。横綱大関を裁くような役柄になると、その相続は甚だ立派である。立行司ともなると短刀をさしている。このように、古いしきたりを守り続ける大相撲なのだが、畳での生活が日常的ではなくなった我々にとっては、枡席はいささか窮屈すぎるように思う。古い世代の男性4人であったので救われた部分もあるが、体格がよくなった若い世代の男性4人が枡席に押し込まれた姿は、想像するのさえ気持ちが悪い。

さて、量子力学の話に一区切りつけたいので、今回の記事は、量子力学で中心をなしているシュレディンガー方程式の話である。

12.シュレディンガー方程式

粒子が相互に交換される記事で、それを表すハミルトニアンを次のようにした。
\begin{eqnarray}
\hat{H}=-g\sum_{l=-\infty}^\infty (\hat{a}^\dagger_{l+1} \hat{a}_l + \hat{a}^\dagger_{l} \hat{a}_{l+1})
\end{eqnarray}

12.1 運動エネルギー

エネルギーは、運動エネルギーとポテンシャルエネルギーで表される。上記の式が運動エネルギーだけを表すようにするために、少し変形する。上記の式では、二つの粒子が存在するので、これを打ち消すことを考える。このためには、二つの粒子を引き去ればよいと考えられるので、同じ位置で相互に交換される二つの粒子を前の式から差し引いた次の式を考える。
\begin{eqnarray}
\hat{H}'=-g\sum_{l=-\infty}^\infty (\hat{a}^\dagger_{l+1} \hat{a}_l + \hat{a}^\dagger_{l} \hat{a}_{l+1} - 2\hat{a}^\dagger_{l} \hat{a}_{l})
\end{eqnarray}

波数の1次元空間中での1粒子状態\(|\kappa> = \displaystyle \sum=m A e^{i\kappa m}\hat{a}^\dagger_m|0>\)に作用させると
\begin{eqnarray}
\hat{H}' |\kappa>=g(2sin \frac{\kappa}{2})^2 | \kappa>
\end{eqnarray}
となる。これより、\(|\kappa>\)が\(\hat{H}'\)の固有状態であることが分かる。

また、\(k=\kappa / d\)なので、分散関係
\begin{eqnarray}
E' = g(2sin \frac{\kappa}{2})^2=g(2sin \frac{k}{2} d)^2
\end{eqnarray}
である。これより、\(k=0\)の時、即ち、粒子が移動していないとき、エネルギーは0となる(これから、上記の式にはポテンシャルエネルギーが0であることが確認された)。

\begin{eqnarray}
\hat{H}=-g\sum_{l=-\infty}^\infty (\hat{a}^\dagger_{l+1} \hat{a}_l + \hat{a}^\dagger_{l} \hat{a}_{l+1} - 2\hat{a}^\dagger_{l} \hat{a}_{l})
\end{eqnarray}
を実空間に移すと、
\begin{eqnarray}
\hat{H}=\int_{-\infty}^\infty \hat{a}^\dagger(x) \left[ - \frac{\hbar^2}{2m} \frac{\partial^2}{\partial x^2} \right] \hat{a}(x) dx
\end{eqnarray}
なお、上の式で\(m\)は1粒子の重さである。

また、波数空間では
\begin{eqnarray}
\hat{H}=\int_{-\infty}^\infty \left[ \frac{(\hbar k)^2}{2m} \frac{\partial^2}{\partial x^2} \right] \hat{a}^\dagger(k) \hat{a}(k) dk
\end{eqnarray}

12.2 ポテンシャルエネルギー

ポテンシャルを\(V(x)\)で与えることにしよう。位置や運動量を表す演算子を考えてきたときと同じように、ポテンシャルを表す演算子を次のように用意しよう。
\begin{eqnarray}
\hat{V} = \int_{-\infty}^\infty V(x) \hat{a}^\dagger(x) \hat{a}(x) dx
\end{eqnarray}

位置\(x'\)に粒子が1つある状態\(\hat{a}^\dagger(x') | 0 > \)に\(\ \hat{V}\)を作用させると、

\begin{eqnarray}
\hat{V}\hat{a}^\dagger(x') | 0 > &=& \left[ \int_{-\infty}^\infty V(x) \hat{a}^\dagger(x) \hat{a}(x) dx \right] \hat{a}^\dagger(x') | 0 > \\
&=& V(x') \hat{a}^\dagger(x') | 0 >
\end{eqnarray}
となる。

12.3 シュレディンガー方程式

それでは、運動量とポテンシャルを共に含んだ演算子を考えることにしよう。
\begin{eqnarray}
\hat{H} &=&\int_{-\infty}^\infty \left[ - \frac{\hbar^2}{2m} \hat{a}^\dagger(x) \frac{\partial^2}{\partial x^2} + V(x) \hat{a}^\dagger(x) \hat{a}(x) dx \right] \hat{a}(x) dx \\
&=& \hat{T} + \hat{V}
\end{eqnarray}

状態\(\)の時間発展方程式は次の式で表すことができた。
\begin{eqnarray}
i \hbar \frac{d}{dt}|\Psi(t)>=\hat{H}|\Psi(t)>
\end{eqnarray}

そこで、この式に先の演算子を代入すると、次のシュレディンガー方程式を得ることができる(なお、\(\psi(y, t)\)は波動関数である)。

\begin{eqnarray}
i \hbar \frac{\partial}{\partial t} \psi(y, t) = \left[ - \frac{\hbar^2}{2m} \frac{\partial^2}{\partial y^2} + V(y) \right] \psi(y,t)
\end{eqnarray}

随分と沢山の記事を書いたが、漸くシュレディンガー方程式までたどり着いた。

Haskellとの関連で残されている課題は、ケットとブラを連続な空間に拡張することである。この時、将来への拡張を考えて、1次元空間ではなく3次元空間への適用を考慮しておく必要がある。
現時点では、3次元の複素数のベクトル空間が考えられるが、これについては、また、時を改めて記事を書くこととしたい。