昨日は、シチリアの代表的な料理であるカポナータを料理した。カポナータは、日本流に説明すると、揚げナスの甘酢煮である。甘酢煮には、酢と砂糖および塩が用いられる。酢の起源を調べてみよう。
日本料理で用いる酢は米を原料としている。米を原料にして醸造酒を作り、そこに酢酸菌を加え、酢酸発酵させることで酢は作られる。ウィキペディアによれば、酢は応神天皇(15代)の頃に中国から渡来したと記載されているが、本当かなと疑問に思う。
天皇という称号は、天武天皇(40代、7世紀)から使われるようになった。このため、応神天皇という呼び名は後の時代になって付けられたものである。あるいは、応神天皇という存在そのものが後から創作された可能性もある。
実在していれば、諡号(しごう)が使われたものと思われる。応神天皇の諡号(しごう)は、日本書紀(720年完成)には「ほむたのすめらみこと」と、また、古事記(712年に元明天皇に献上)には「ほむだわけのみこと」と表記されている。
天皇系譜図の始まりの頃の天皇は実在したかどうか怪しいのだが、応神天皇については、井上光貞が『日本の歴史 第1巻 神話から歴史へ』中公文庫(1964年)で、確実に実在が認められる最初の天皇と記載している。現在の学説がどのようになっているかは知りたいところである。ウィキペディアから御影を借用する。
実在していたとしても、その当時の豪族の一人だと思われる。中国の六朝時代の史書には、倭の5王(5世紀)の記載があり、これらの王が当時の中国の、東晋、栄へ使いを送ったという記載がある。もし、応神天皇がこの時代の豪族の一人であれば、中国に使者を送り、中国の物産や文化をもちこんだ可能性はあるのだが、このことは憶測の域を出ない。
大化の改新(646年)の頃に律令制がひかれ、長い年月をかけてこの制度は完成される。この制度の下に、酒造司(みきのつかさ/さけのつかさ)という役所が置かれ、ここは酒、醴(あまざけ)、酢などの醸造をつかさどっていた。従って、律令制が始まったころ、あるいは完成までの途中の段階では、酢はすでに使われていたことが分かる。
一方、イタリア料理に用いるのは、ブドウを原料にした酢だ。ブドウ液を酢酸発酵させたバルサミコ酢、ワインを酢酸発酵させたワインビネガーがある。ワインには白と赤があるように、ワインビネガーにも白と赤がある。白の方がよくつかわれていると思うが、今回、用いるのは赤の方である。ウィキペディアからこれらの酢の写真を借用する。
ビネガーの歴史を調べようと思って、英語版のWikipediaを検索した。しかし、残念なことにたった一行しか書いてない。「ビネガーは何千年も前から作られ使われ、紀元前3000年のエジプトまでたどれる」となっている。人々の生活に古くから根付いていたのだろう。
歴史探索はこのくらいにして、カポナータを作ってみよう。今回のカポナータは甘酢づくりに凝ってみた。
ナスは米ナスを用いた。アメリカに留学した頃、スーパーで見かけるナスの大きさに仰天させられた。米ナスはそれとは異なるが、アメリカのブラックビューティーという品種を日本で改良したものだ。やはり、群を抜いて大きい。
米ナスは肉質が固いので、加熱して食べる食材で、田楽やグラタンに使われる。また、トマトとの相性も良いので、今回のカポナータ、あるいは、ラタトゥイユにも使われるとのことである。
今日用いる材料は、ナス以外はすべて甘酢を作るための材料だ。玉ねぎ(25g)、セロリ(10g)、松の実(大匙半分)、ケイパー(大匙半分)、グリーンオリーブ(3個)、赤ワインビネガー(15cc)、白ワイン(15cc)、グラニュー糖(小匙半分)、ニンニクオイル(大匙一杯)、イタリアンパセリ、塩、コショウ、トマトソース(100cc)だ。
まず、ナスの方だが、甘酢を作る前に下ごしらえしておく。
2cm角になすを切る(今回は失敗した。次回からは次のように切ろうと思っている。なすを縦方向において、その中心線から左右1cmのところで縦に切る。さらに、それぞれから2cm離れたところでやはり縦に切る。90度回転させて同じように切る。これで、縦方向に2cmの長い材料が得られたので、今度は、切ってある方向とは直角に、即ち、横方向に、2cmずつ切る)。
今度はナスのあく抜きだ。ナスに小匙半分の塩をまぶし、30分間放置する。ナスから水分が出てくるので、水をかけて塩とともに洗い流す。次にナプキンでナスについている水をふき取る。水が残っていると油の中に入れたときに飛び跳ねるので、きれいにふき取ることが大切である。
次に、甘酢を作ろう。グリーンオリーブは種を取り3mm角に切る。セロリ(茎の固い部分はそいで除く)、玉ねぎはみじん切りにする。
次に炒めるがその時ニンニクオイルを用いる。ニンニクオイルは、100ccのエクストラバージンオイルに、5片(50g)ほどのみじん切りにしたニンニクをつけたものである。イタリア料理を作るときは、頻繁に用いるので作っておくと便利である。
フライパンでニンニクオイルをブクブクいうまで熱し、その後、弱火にして松の実を加え、少し色ずくまで炒める。
さらに、ためねぎとセロリをくわえ、甘い香りがするまで炒める。
次に、グリーンオリーブ、ケイパーを入れてざっと炒め、さらに、赤ワインビネガーと白ワインを入れる。きついビネガーの香りがする。好きな人は顔を近づけてもよいが、僕は顔を背けて炒めた。アルコールが飛んだところで、中火にし、トマトソース、塩、コショウを加える。
さて、ナスを揚げて甘酢に絡めよう。ナスは、220度に熱したサラダ油で、少し色がつく程度に揚げた。
これを先ほどの甘酢に絡めた。最後に、グラニュー糖を混ぜてほんの少しだけ甘みを加えた。
昨日の食卓は、妻の手による鶏肉の白ワイン蒸しとともに味わった。なお、カポタータには西洋パセリをのせた。カポナータはなかなか深みのある味であった。
最後に、カポナータを料理するにあたっては、川上文代著『イタリア領地・フランス料理の教科書』を参考にした。