2.2 余単位-単位随伴による定義
随伴の定義には先に説明したもののほかに、いくつかの同値な言い換えがある。その中で、よく知られているものに、余単位(counit)-単位(unit)随伴がある。これは次のように定義される。
圏\(\mathcal{C}\)と\(\mathcal{D}\)の余単位-単位随伴とは、二つの関手\(L: \mathcal{D} \rightarrow \mathcal{C}\)と\(R: \mathcal{C} \rightarrow \mathcal{D}\)、および二つの自然変換
\begin{eqnarray}
ε: LR \rightarrow I_\mathcal{C} \\
η: I_\mathcal{D} \rightarrow RL
\end{eqnarray}
があり、図12に示すような可換図式となるときである(これを三角可換図式と呼ぶ)。そして\(ε\)と\(η\)はそれぞれ余単位と単位、\(L\)は\(R\)の左随伴、\(R\)は\(L\)の右随伴と呼ばれる。
上記の可換図式を等式で表すと、
\begin{eqnarray}
I_L=εL \circ Lη \\
I_R=Rε \circ ηR
\end{eqnarray}
となる。
2.3 証明をストリング・ダイアグラムで行う
それでは、先に説明した随伴の定義から、今回の余単位-単位を用いての定義が導き出されることを、ストリング・ダイアグラムを用いて証明しよう。
\begin{eqnarray}
Φ_{A,B}:{\rm Hom}_\mathcal{C} (LB,A) \cong {\rm Hom}_\mathcal{D} (B,RA)
\end{eqnarray}
より、\(Φ_{A,B}Φ^{-1}_{A,B}g = g\)となるので、\(g \in h^BRA\)を関手\(L\)で圏\(\mathcal{C}\)に移すと、これに対応した射\(f \in h^{LB}A\)となる。さらに関手\(R\)で圏\(\mathcal{D}\)に移すと、\(g\)に戻る。これはストリング・ダイアグラムで表すと、図13となる。
右側を変形すると、図14となる。
これを見やすくすると、図15の中央の図となる。そして、これと左側の図とは等しい。
三角可換図式に対応する部分を抜き出すと図16となる(\(g\)より左側の部分)。この左図で下の方から上の方に移動していくと、\(R\)から、\(Rη\)に達し、そこを越えたところから\(RLR\)となり、さらに上に行くと\(εR\)となり、ついに\(R\)に至ることが分かる。そして右図は左図と同値であるので、図12の三角可換図式(右側)と同じであることが分かる。
同じように、\(f \in h^{LB}A\)についても考えることができ、一回りしてきたものと、そのままとが等しいというストリング・ダイアグラムは図17となる。
これの右側を変形すると、図18の中央の図となる。これとその右側の図とは等しい。
三角可換図式に対応する部分を抜き出すと、図19を得る。これからこの図は図12の三角可換図式(左側)と同値であることが分かる。
これによって、随伴の二つの定義が同値であることが証明できたが、ストリング・ダイアグラムを用いての証明は、このようにビジュアルで分かりやすい。