bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

圏論:ストリング・ダイアグラム ー 異なる随伴の定義が同値であることの証明

2.2 余単位-単位随伴による定義

随伴の定義には先に説明したもののほかに、いくつかの同値な言い換えがある。その中で、よく知られているものに、余単位(counit)-単位(unit)随伴がある。これは次のように定義される。

圏\(\mathcal{C}\)と\(\mathcal{D}\)の余単位-単位随伴とは、二つの関手\(L: \mathcal{D} \rightarrow \mathcal{C}\)と\(R: \mathcal{C} \rightarrow \mathcal{D}\)、および二つの自然変換
\begin{eqnarray}
ε: LR \rightarrow I_\mathcal{C} \\
η: I_\mathcal{D} \rightarrow RL
\end{eqnarray}
があり、図12に示すような可換図式となるときである(これを三角可換図式と呼ぶ)。そして\(ε\)と\(η\)はそれぞれ余単位と単位、\(L\)は\(R\)の左随伴、\(R\)は\(L\)の右随伴と呼ばれる。

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図12:余単位-単位随伴を成り立たせる可換図式

上記の可換図式を等式で表すと、
\begin{eqnarray}
I_L=εL \circ Lη \\
I_R=Rε \circ ηR
\end{eqnarray}
となる。

2.3 証明をストリング・ダイアグラムで行う

それでは、先に説明した随伴の定義から、今回の余単位-単位を用いての定義が導き出されることを、ストリング・ダイアグラムを用いて証明しよう。

\begin{eqnarray}
Φ_{A,B}:{\rm Hom}_\mathcal{C} (LB,A) \cong {\rm Hom}_\mathcal{D} (B,RA)
\end{eqnarray}
より、\(Φ_{A,B}Φ^{-1}_{A,B}g = g\)となるので、\(g \in h^BRA\)を関手\(L\)で圏\(\mathcal{C}\)に移すと、これに対応した射\(f \in h^{LB}A\)となる。さらに関手\(R\)で圏\(\mathcal{D}\)に移すと、\(g\)に戻る。これはストリング・ダイアグラムで表すと、図13となる。

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図13:\(g \in h^BRA\)を一回りさせたものと、元のものとが同じであることを表したストリング・ダイアグラム

右側を変形すると、図14となる。

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図14:一回りした\(g\)のストリング・ダイアグラムを変形する。

これを見やすくすると、図15の中央の図となる。そして、これと左側の図とは等しい。

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図15:一回りした\(g\)と、もとの\(g\)とがストリングダイアグラムで表す。

三角可換図式に対応する部分を抜き出すと図16となる(\(g\)より左側の部分)。この左図で下の方から上の方に移動していくと、\(R\)から、\(Rη\)に達し、そこを越えたところから\(RLR\)となり、さらに上に行くと\(εR\)となり、ついに\(R\)に至ることが分かる。そして右図は左図と同値であるので、図12の三角可換図式(右側)と同じであることが分かる。

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図16:三角可換図式の一つを導き出した。

同じように、\(f \in h^{LB}A\)についても考えることができ、一回りしてきたものと、そのままとが等しいというストリング・ダイアグラムは図17となる。

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図17:\(f \in h^{LB}A\)を一回りさせたものと、元のものとが同じであることを表したストリング・ダイアグラム

これの右側を変形すると、図18の中央の図となる。これとその右側の図とは等しい。

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図18:一回りした\(f\)のストリング・ダイアグラムを変形する。

三角可換図式に対応する部分を抜き出すと、図19を得る。これからこの図は図12の三角可換図式(左側)と同値であることが分かる。

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図19:三角可換図式の残りの一つを導き出した。

これによって、随伴の二つの定義が同値であることが証明できたが、ストリング・ダイアグラムを用いての証明は、このようにビジュアルで分かりやすい。