bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

北海道・縄文の旅(4日目)

北海道縄文の旅も4日目、そして最終日だ。さすがに4日間も一緒にいると、見ず知らずの人々の集まりであったツアー仲間たちの間でも会話の量が増えてきた。バスの中でも、遺跡で説明を受けているときでも、賑やかになり、軽口の一つもたたくような状況になった。今回のツアーに参加したのは夫婦2組、女性一人旅9人、男性一人旅5人だった。一人だけ30代で、残りは60歳を越えていた。やはり、縄文時代が大好きという人が多く、訪れた遺跡を紹介しあったりして、次の計画を立てるにあたっての情報を得ていた。席を和ませてくれたのは、やはり大阪のおばちゃん(おばあちゃん?)。最近、東京に引っ越してきたそうで、途切れることなく、色々な話を、流暢な大阪弁で語ってくれた。男の人と女の人、そして、東京に人と大阪の人とのコミュニケーション力の差を改めて認識する旅でもあった。

この日の予定は、箱館周辺の縄文遺跡と北方民族資料館の見学で、全行程は100km足らず。
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1.函館市縄文交流文化センター

最初に訪問したのは、中空土偶で有名な函館市縄文交流文化センターだ。センターの学芸員の方が見学路に沿って説明してくれた。最初は縄文時代の概略で、写真のパネルで説明してくれた。中央の青と赤の帯状の線は縄文時代の気温を表し、赤は暖かったことを、青は寒かったことを示している。学芸員の方にビジュアルで分かりやすい展示ですねと感想を述べたところ、多くの人からそのように言われ、喜んでいますとのことだった。
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その次の部屋には、縄文時代の土器や石器が所狭しと飾ってあった。説明を一生懸命に聞いたために、次の二つの写真しか取れなかった。一つは装飾品、もう一つは舟形土製品だ。
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さらに次の部屋には、亡くなった子供の足形を取ったのであろうか、足形付き土板があった。
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最後は、今回のツアーのハイライトである中空土偶だ。これは北海道唯一の国宝だ。昭和50年(1975)に、旧南茅部町の主婦がジャガイモ畑で農作業をしているときに、人形の焼き物を発見し、地元役場に相談した。その町の教育委員会が調査をし、出土した場所が縄文時代後期の墳墓群である可能性が高いことが判明した。現在、この地は著保内野遺跡(ちょぼないのいせき)と名付けられている。

昨年のトーハクでの縄文の展示で、国宝に指定されている他の土偶と一緒に飾られた。しかしその時は写真を撮影することがかなわなかったので、今回はいろいろな角度から撮影した。
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このセンターは世界文化遺産登録を目指している垣の島遺跡に隣接している。生憎と雨にかすんでいるが、センターから遺跡を望む場所での写真だ。
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2.大船遺跡埋蔵文化財展示館

次は大船遺跡埋蔵文化財展示館だ。垣の島遺跡、著保内野遺跡と同様に、平成16年(2004)までは南茅部という町に属していたが、合併により函館市となった。大船遺跡は、大船川左岸の標高45mを超える段丘上に造られた、縄文時代の前期後半(5,200年前)から中期(4,000)ごろまで、1,000年以上続いた大規模な集落の跡だ。100棟を超える竪穴建物跡、盛土遺構、100基以上の土坑墓群などが確認され、深さが2mを超える竪穴建物に特徴がある。たくさんの土器とともに、クジラやオットセイの骨とクリやクルミなどが出土している。

土砂降りの雨の中を、ツアー仲間と運の悪さを嘆きながら、ずぶぬれになりながら見て回った。
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深い穴の竪穴住居の復元だ。
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展示館の方はちょっと寂しく、パネルによる展示が主であった。それとは別に、発掘の様子を示したジオラマがあった。
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3.函館市北方民族資料館

函館駅近くの朝市で昼食をとったあと、函館市北方民族資料館に向かった。今回の旅の目的は縄文時代の遺跡を見ることであったが、実はこの資料館が一番面白かった。訪れる前はおまけぐらいに考えていたのだが、百聞は一見に如かずで、やはり見学してみるものだと思った。

特にツアーを主催してくれた案内人が、ここの資料館をとても気に入っているようで、とても懇切丁寧に説明してくれた。そのため写真を撮る時間がほとんどなかったが、限られた時間の中でのものが以下だ。

幕末から明治初期のアイヌ絵師の第一人者の平沢屏山が描いた「アイヌ風俗12カ月屏風」(復元)から、
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アイヌの人々の衣装だ。地域で幾何学的なパターンが異なる。
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アイヌの祭礼具であるイクパスイ:周りに存在する全ての神々に感謝と祈願をこめて、これにお酒をつけてふりかける。
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セイウチの牙に刻まれた狩猟風景。とてもきれいだ。
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アイヌの子供たちが遊んでいる様子を示した絵も。子供たちの様子が分かってとても良い。
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制裁棒であるストウ:喧嘩の決着をお互いの背中を殴り合うことでつけた。何とも痛そう。
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アイヌの人々を描いた掛け軸
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もう少し見学をしたかったが、列車に乗り遅れないようにと新函館北斗へと向かった。鼻の長い新幹線で東京へと向かった。
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今回の旅行で、北海道の縄文時代のことがよく理解できたので、同じ文化圏であった東北地方の縄文遺跡をなるべき早い時期に訪れようと決意して、車中の人となった。