bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

神奈川県立歴史博物館で特別展「錦絵に見る明治時代」を鑑賞する

コロナウイルスの一回目のワクチン接種が済んだので、少し気楽な気分となって、先週は歴史博物館に足を運んだ。鳥獣戯画の展示会が東京国立歴史博物館(トーハク)で再開されたので、その当日に見学に行った。大勢の人が訪れることを防ぐために予約制をとっており、参加者数は限られていたにもかかわらず、見学者の列が、展示ケースに沿って間隔がないほどに、つくられていた。列は一列だけで普段のように幾重にもはなっていなかったので、十分に堪能できたものの、変異株のウイルスに対しては緩和し過ぎのように感じた。

トーハクを楽しんだのでさらにもう一つということで、神奈川県立歴史博物館(県博)をと考えて、インターネットでの予約を試みた。前の夜に予約が取れるかどうか確認しておいたので、自信をもってアクセスしたのだが、予約の画面に行くことができない。不思議だと思って色々な方法を試している最中に、知り合いから、警備員の人が感染したために今日からしばらく休館になるというメールが入った。世の中上手くいかないこともあると感じた数日後に、同じ人から土曜日に再開されるという知らせがあった。早速お昼頃の時間帯を予約して、ここも再開当日に訪問した。

県博で開催されていた特別展は「錦絵に見る明治時代」であった。錦絵は浮世絵の一種で、多色刷りの版画を指す。県博には、丹治恒夫さんが収集された錦絵が6000点ほど保存されていて、その中の1000点は明治時代の作品だ。今回の展示では明治時代の出来事を伝えてくれる錦絵が展示され、当時の様子をビジュアルに伝えてくれる。展示品は撮影してホームページに載せても構わないということだったので、興味を引いたものをいくつか紹介しよう。なお、特別展は前期と後期で展示物がそっくり入れ替わった。ここに紹介するのは後期の展示である。

最初の作品は、「東京八ッ山下海岸蒸気機関車之図」。作品が作られたのは明治3~5年。新橋・横浜間に鉄道が開通したのが明治5年9月なので、開通前にこの作品は作られたのであろう。奇妙なことに線路が描かれていない。また列車の車輪が、馬車のそれと似ているので、想像で描いたのであろう。
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次は「上州富岡製糸場之図」。明治5年、群馬県富岡市に創業した製糸場の様子。レンガ造の建物に、女工さんが一列に並んで糸をくくっている。
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次は「板垣君遭難之図」。自由民権運動の指導者で、自由党総理であった板垣退助明治15年4月6日に、岐阜県で演説中に相原尚褧(しょうすけ)に襲われて負傷する。のちに「板垣死すとも自由は死せず」という表現が広く使われるようになった場面である。
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次は「賊魁の首級実検之図」。明治10年西南戦争で敗れた西郷隆盛の首実検をしている場面。何ともおどろおどろしい。
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次は「憲法発布式桜田之景」。憲法発布を祝うために、天皇・皇后が桜田門を出て、青山練兵場に向かう場面。右上に皇居、左上に富士山、その下の中ほどに茶の着物の雀踊り集団、左隅に山車と、祝賀ムードいっぱいである。
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次は「第二会廿五年国会議事堂」。明治25年開会の議会で、議長は星亨。上の一覧表にはこのときの衆議院議員の名前が記されている。
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次は「靖国神社大祭執行横綱式場之図」。一時期、靖国神社の相撲場がよく見える会議室をよく利用した。人影もなく土俵だけが寂しそうに待っている景色を見て、どの様な時に利用されるのだろうかと不思議に思ったが、この錦絵を見て、かつては大いに利用されたのだと納得した。
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次は「大日本東京吾妻橋真画」。墨田川では初の鉄橋となった吾妻橋明治20年、原口要により設計された。現在は真っ赤な橋に生まれ変わっている。
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最後は「上野公園地第三回内国博覧会之図」。この作品は明治23年につくられた。西洋人のように背が高く、足も長く描かれているのが印象的である。そして空は華やかに真っ赤である。皇太子も軍服姿の正装で参加している。
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特別展の会場で全体を見渡すと、赤の色に驚かされる。一つ一つ紹介するとそれほどでもないが、全体を並べてみるとこの色が目立つ。明治錦絵の色ともいえるのだろう。県博の方は所々に見学者がいる程度だったので、それぞれの作品をじっくりと鑑賞することができ、安全な環境の中で堪能できた。