bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

Haskellで学ぶ圏論・入門編 写像で扱うことの利点(1)

少し、記事が途絶えてしまったが、13日(月曜日)にぎっくり腰になってしまったことが影響している。話には聞いていたが、なかなか難儀な病(?)である。姿勢を変えようとすると痛みが走る。特に、長く座った後、椅子から立ち上がろうとすると激痛が走るので、短いメールを一つだけ処理するのがやっとで、パワーポイントを用いて図を作成するなどという作業は後からくる激痛を思うと、全くその気にはならない。

一週間経って少し良くなってきたので、簡単な記事を書くこととした。写像を集合にする話をしているので、ここでは、筋肉の筋のような図が沢山出てくるのは何とも皮肉である(ここまで書いて、椅子から立ち上がり、筋肉をほぐす。そうでないと、筋肉が固まり激痛が待っている)。

1.圏の仲間たち

これまでの記事で紹介した圏をまとめておく。最初は具体的な圏である。具体圏は対象が集合と構造で、射が構造を保つ写像である。次のような圏が具体圏に属している。

名称 略称(Awodey) 対象 射の合成
集合の圏 \(\mathbf{Sets}\) 小さい集合 関数 関数の合成
モノイド(半群)の圏 \(\mathbf{Mon}\) モノイド モノイドの準同型 準同型の合成
群の圏 \(\mathbf{Groups}\) 群の準同型 準同型の合成
環の圏 \(\mathbf{Rings}\) 環の準同型 準同型の合成
ベクトル空間の圏 ベクトル空間 線形写像 線形写像の合成
グラフの圏 \(\mathbf{Graphs}\) グラフ グラフの準同型 準同型の合成
実数集合の圏 実数集合 連続関数 連続関の合成
位相空間の圏 \(\mathbf{Top}\) 位相空間 連続関数 連続関の合成
順序集合の圏 \(\mathbf{Pos}\) 順序集合 単調写像 単調写像の合成

具体圏と対峙するのが抽象圏である。抽象圏の代表的なものとして、これまでに少し説明した圏の圏と、後の記事で説明するデカルト閉圏がある。圏の圏で用いられる用語、関手の定義自然変換自然同型はそれぞれの記事を見て欲しい。これらの圏をまとめると次のようになる。

名称 略称(Awodey) 対象 射の合成
圏の圏 \(\mathbf{Cat}\) 小さい圏 関手 関手の合成
デカルト閉圏 \(CCC\) 指数対象    

2.終対象から圏への写像

終対象から圏への写像を考えたとき、その写像の集まりは、その圏の対象と同型である。証明は省いて、直感的な説明をする。下図で圏は一つの対象\(A\)を有し、\(A\)は5個の要素\(a_1,a_2,a_3,a_4,a_5\)を有する。また、\(c\)は終対象である。この時、\(c\)から\(A\)への写像は\(f_1,f_2,f_3,f_4,f_5\)の5個である。
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自然数の間での加算は、関数の合成を+としたモノイドとして下図のように表すことができる。
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終対象から上記のモノイドへの写像は下図のようになる。
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自然数の加算は、下図のようなモノイドとしてあらわすこともできる。
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終対象から上記のモノイドへの写像は下図のようになる。この時の写像の数は自然数と同じ数となる。
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