bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

出羽三山を訪れる

先週の土曜日から日曜日にかけて、山形県出羽三山を訪れた。山岳信仰修験道の地として有名ということ以外はなにも知らない。山形県蔵王に行ったことぐらいしかない。百聞は一見に如かずなので、一度見ておこうと思いツアーに参加した。ほとんどがバスの中で座ったまま、ときどきサービスセンターで軽い足の運動、ごくたまに見学地での散策と、片道500㎞の強行軍だった。出羽三山は、羽黒山(標高414m)・月山(標高1984m)・湯殿山(標高1500m)からなる。それぞれが現在・過去・未来と見立てられ、この三山をめぐることは死と再生をたどる「生まれかわりの旅」と称せられている。

今回は羽黒山五重塔・三神合祭殿と湯殿山湯殿山神社を訪問した。最も高い地点にある月山への有料道路は既に閉じられているとのことであった。この旅行も、初日に湯殿山を訪問する予定になっていたが、当日の午前中に降った雪のために有料道路が閉鎖となり、次の日に状態が良ければということになった。冬が間近まで迫っていることを思い知らされた。
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見学地の閉鎖のため予定を変更し、羽黒山へと向かい、ようやく4時にその麓に到着した。新宿を8時に出発したので、なんとここにたどり着くまで8時間も要していた。こういう時の添乗員の方は大変だろうと思いながら、バスを降りると雨が降っていた。昨日購入したディスポーザブルの雨がっぱを着て五重塔に向かった。ここは出羽三山神社なのに塔があることに違和感を覚えたが、江戸時代までは神仏習合天台宗の寺院があった。神社への入り口には、隋神門がある。神仏分離以前は仁王門と呼ばれていた。ここから神域への入り口である。
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中に入ると石畳が続き、雨でぬれていた。足元のおぼつかない人が、おっかなびっくり歩を進めていた。
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石畳の両側に、小さな神社が立ち並んでいた。
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さらに進むと秡川にかかる赤い欄干の橋が現れた。秡川は仏教の頃は三途の川と見做されていたようだ。
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橋の上からは、小さな滝が見えた。雨が降ったため、水量が豊かで見ごたえがあった。
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樹齢1000年の爺杉。婆杉は残念ながら明治35年に台風で倒木したそうだ。
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国宝の五重塔である。この塔は1372年(室町時代)に再建されたとされている。「素朴」の一言に尽きる。
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ホテルは鶴岡駅のすぐそば、部屋からはホームを見ることができ、たまに電車が通った。色彩が綺麗な特急列車は、一両に2,3人しか乗っていないのに何両もつないでいて、不思議な光景であった。朝の鶴岡駅前は静かだった。
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次の日は、運良く天気予報が外れて、青空ものぞく旅行日和となった。最初に向かったのは、羽黒山頂にある三神合祭殿である。昨日のところから石段を踏みしめて登ることもできるが、今回はバスで近くまでいった。冬期は、湯殿山と月山は雪で閉ざされてしまうためお参りできない。そこで三神合祭殿でお参りすると、三つの山の神社をお参りしたことになるという、便利な神社がここである。萱葺の屋根がとても厚いことに驚いた。厚みが2.1mもあるとのことだった。
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修験者たちが修行をしていた。
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松尾芭蕉も同じ光景を見たのだろうか。
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次は前日訪れるはずであった湯殿山神社。駐車場から本宮までは、シャトルバスで上がった。本宮は撮影禁止。また内の様子は伝えてはいけないということである。本宮の入り口には牛が寝そべっていた。通常の神社と異なり、本宮は建物ではなく岩である。靴下を脱いで裸足になり、神と一体になって拝む必要があるが、詳細はご自身でどうぞ。
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帰りもシャトルバスを利用できるが、秋を満喫するために歩いた。
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コロナウイルスが広まってからこの方、旅行に出ることはなく、今回が本当に久しぶりであった。東北の日本海側の短い秋の最も良い時期に旅することができとても良かった。特に、湯殿山の紅葉は美しく、高い地点は雪も点在していて、この地域が閉ざされることが近いことを肌で感じさせてくれた。山岳信仰修験道については分からずじまいのままで課題として残ったが、久しぶりの旅行を楽しめて良かったと感じている。