bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

ローマ風、ロマネスコと生ハムのマリネ

新しい年になったことでもあり、面白い野菜が出ていることを期待して、散歩しがてら、馴染みの農協の売り場に立ち寄ってみた。入った瞬間、何ともフラクタルな野菜が目に留まり、びっくり仰天した。フラクタルは、数学的な概念で、日本語では自己相似形ともいう。全体を見ても、部分を見ても、あるいはどこを観察しても、同じ形になっているものをフラクタルという。

フラクタル図形の簡単な例を示そう。

直線の線分が与えられた時、それを三等分し、その中の真ん中の線分を底にして正三角形を描き、底となっていた線分を取り除く。この操作によって、すそ野の広い富士山のような線画が出来る。次にそれぞれの線分に対して(このときは4つの線分がある)、同じ操作を繰り返す。真ん中に大きな塔が建ち、その両横には小山がある図形が現れる。さらにそれぞれの線分に対して(このときは16線分)に対して、同じ操作を繰り返す。雪の結晶模様のような、あるいは、クリスマスツリーのような、きれいな図形が得られる。
f:id:bitterharvest:20200110142046p:plain
農協の売り場で発見した野菜は、今説明した図形を3次元にして表したような形をしていた。
f:id:bitterharvest:20200110111324j:plain
大きくすると、同じような構造が繰り返えされていることが確認できる。
f:id:bitterharvest:20200110120135p:plain
店頭には、ロマネスコと紹介され、サラダにするとおいしいと説明があった。このように綺麗なフラクタルを自然界で見るのは初めてだ。大学の講義でフラクタル図形について説明をしたことがあるが、ロマネスコを見せれば学生たちはさぞかし感動したことだろうと思うと、これまで巡り合えなかったことがとても残念に感じられた。

先ほど線分で説明したフラクタルな図形は、線分だけで構成されているので、1次元の世界に属するのだが、その構成された図形を考えると、1次元と2次元の中間に位置する。ロマネスコも、表面は2次元だが、複雑に表面が構成されているので、その表面は2次元と3次元の中間に位置する。

なぜフラクタルな形状を必要とするのだろうと考えると面白い。自然界には2次元と3次元とが競合する世界が存在する。人間の体は、内部は3次元だが、皮膚の部分は2次元だ。熱(エネルギー)は3次元の体内に蓄えられているが、その体内と外部との熱の差をコントルールしているのは2次元の皮膚の部分である。

北国に住む人々は、外気が寒いので、なるべく体内の熱を逃がさないようにしたい。そのためには、熱を蓄えられるようにするか、熱を逃がさないようにするのがよい。熱を蓄えられるようにするためには、体を大きくするのがよい。これにより3次元の体が増える割合は、2次元の皮膚のそれよりも、ずっと大きいので、熱を蓄えやすくなる。北欧の人々の身長が高いのはこのためという説明もある。

あるいは、熱を逃がさないようにする。このためには表面を小さくすることだが、これは丸い体にすることで達成される。ポーランドの人々を見ていると、ずんぐりで丸顔の人が多いので、自然淘汰という戦いの中で、この戦略をとったのかと思わずにはいられない。

逆に、暑い国の人は低身長で、やせ型となる。中国の人々を観察すると、北京の人々は高身長の人が多いが、南の広東の人は低身長なのはこのためだろう。

脳の構造も同じだと言われている。脳の重要な機能は、表面の部分が担っているので、表面積を大きくしたい。このために、複雑なしわによって脳の表面積を稼ぎ出していると言われている。すなわち面という2次元の構造なのだが、しわを利用することで3次元の構造に近いものを作り出している。限られた頭部の空間の中に大きな脳を作り出すための工夫の一つである。

フラクタルはこのように、自然界とも深い結びつきを有しているのだが、このように美しい形状のものを、正月早々に見ようとは夢にも思わなかった。

夕飯には、ここで購入したロマネスコを早速使うことにした。我が家では、朝は私が、夜は妻が支度をすることにいつの間にかなってしまったので、妻に頼んでロマネスコのマリネを用意してもらった。

ロマネスコの英語での表記はRomanesco broccoli、イタリア語での表記はBroccolo Romanescoである。分類学上はカリフラワーに属すそうだが、形状がブロッコリーに似ているので、英語でもイタリア語でもブロッコリーになっているのだろう。

ロマネスコのマリネはいたって簡単で、生ハムと温めたロマネスコをマリネするだけでよい。今回は、イタリア製の生ハムを用いたので、ロマネスコの名前にちなんでローマ風マリネだ。

ロマネスコは、一口大に切って、電子レンジで温める。使用した電子レンジには、ゆで葉果菜という設定があったので、これを利用。1個分を温めたのが下の写真。
f:id:bitterharvest:20200110111152j:plain
そして生ハム。
f:id:bitterharvest:20200110111214j:plain
マリネは、サラダ油大さじ2杯、酢大さじ1杯、あらびきマスタード小さじ1杯、塩小さじ1/4杯を混合。
f:id:bitterharvest:20200110111238j:plain

ロマネスコは半分、生ハムは3枚もちいて、2人分のマリネを用意してくれた。
f:id:bitterharvest:20200110111301j:plain

ロマネスコはもう少し歯ごたえのある硬さの方が良いように感じた。電子レンジで茹でているときに電話がかかってきたので、茹ですぎになったというのが妻の弁明であった。