bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

憂世(うきよ)と浮世(うきよ)

所属しているアマチュアの歴史研究会では、メンバーがそれぞれの研究成果を紹介することになっている。今月は私の番だったので、『憂世(うきよ)と浮世(うきよ)』ということで発表した。

江戸時代は、高い年貢をとられる食うや食わずの百姓や傘張りの内職で糊口を凌ぐ浪人たちのイメージが強く、とても過酷であったと学校教育で教えられた。しかし、浮世絵に代表されるこの時代の文化は、西洋ではジャポニズムとしてもてはやされた。緊縮財政・質実剛健を強いてくる幕府の政策下にありながら、自由奔放・享楽的とも見える江戸の文化はなぜ開花したのだろう。この謎を解くカギは「中間層の拡大」と「知的欲望の湧出」と考えた。そして、なぜこのような結論に至ったかについて、経済学や精神分析での理論を利用して、謎解きを行った。

憂世(ゆうせい)は、元々は仏教用語で、平安後期から中世にかけて無常観や穢土観など仏教的厭世思想の色合いをもって使われたと、司会者の方から教わった。タイトルだけから判断した人は、仏教的な内容と思った人もいたようだ。この論文ではそうではなく、憂世は、つらいことの多い世の中、苦しみに満ちたこの世という意味で使っているので、あらかじめ断っておく。

また、浮世は「ふせい」とも読むそうで、仏門に入られた司会者の方は、題名を「憂世(ゆうせい)と浮世(ふせい)」といわれたが、ここでは少ししゃれて、「憂世(うきよ)と浮世(うきよ)」とした。興味を持たれた方は、以下の論文を読んでほしい。