bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

五反田川の河津桜を訪ねて

一、二週間ほど前、濃いピンク色が印象的な河津桜のニュースがあちらこちらで流れていた。しかしこの頃はいくつか行事が重なり、出かける機会を逃してしまった。もう見頃は過ぎてしまったのではないか――そう思いながらも気になり、川崎市生田を流れる五反田…

飛鳥後期を歩く――終末期古墳と王権表象の転換

「大阪・奈良へ古代を訪ねる旅」の最終日は、七世紀末ごろの墓制をたどる行程となった。飛鳥時代中期から後期は、日本の古代国家が形成されていく激動の時代であった。乙巳の変、白村江の敗戦、壬申の乱――立て続けに起こった政治的危機を経て、天武・持統朝…

飛鳥前期を歩く――国家形成の現場へ

今回の「大阪・奈良へ古代を訪ねる旅」は、二泊三日の行程であった。今回の旅では、飛鳥という空間がどのように国家形成の舞台となったのかを、現地の遺跡を歩きながら確かめることを目的とした。二日目に前回の記事で紹介した百舌鳥・古市古墳群を訪れ、初…

巨大古墳は何を語るのか ― 百舌鳥・古市古墳群と門閥氏族の競合

小学生の社会科で「大阪には巨大な古墳がある」と教わって以来、百舌鳥・古市古墳群には長く関心を抱いてきた。しかし実物を訪れる機会は得られないまま年月が過ぎ、今回、奈良・大阪へ古代を訪ねる旅に出て、ようやく念願を果たすことができた。ところが、…

フライパンひとつのラムチョップ

大型スーパーの精肉売り場には、いつ訪れても多種多様な肉が並んでいて、買い物をしない日でもつい足を止めてしまう。どんな種類の肉があるのか、どの部位なのか、どのように切り分けられているのか、どれが人気なのか――そんなことを眺めているうちに、気づ…

アーティゾン美術館で『モネ没後100年 クロード・モネ —風景への問いかけ』を鑑賞する

本展は、モネ没後100年を記念して開催された、オルセー美術館所蔵作品による『クロード・モネ展』である。展覧会の公式サイトでは、モネを「移ろいゆく自然の光に魅せられ、その美をキャンバスにとどめた画家」と紹介している。クロード・モネ(Claude Monet…

横須賀市自然・人文博物館で、「あつまれ!! かながわのはにわ」展を鑑賞する

以前から神奈川の古墳文化に関心を抱いていた私は、横須賀市自然・人文博物館で埴輪が展示されていると知り、足を運んだ。埴輪とは、古墳の周囲に並べられた特別な形をもつ土製品である。その用途については、死者を祀るための聖域を示す標識であったとする…

宮廷から都市へ――日仏における近代美術の形成と都市周縁文化

歴史愛好家の集う研究会において、近世から近代へと移行する時代のフランスと日本の絵画――印象派と浮世絵――を取り上げ、政治・経済・社会の変化を背景とする文化比較の試みを報告した。幸いにも発表は好評を得、終了後には数名の参加者から感想や質問をいた…

伊豆大島の椿油でつくる、軽やかなアヒージョ

先週末、伊豆大島を訪れた。伝統産業に携わる方々の話を伺うなかで、椿油の魅力をあらためて感じさせられた。「椿油でつくるアヒージョは本当においしい。クセがなく、素材の味が澄んでくる」そう勧められ、一瓶を持ち帰った。昨夜、いよいよその椿油を使っ…

椿まつりの「伊豆大島」を訪れる

この冬一番の寒さとなった先週末、伊豆大島を訪れた。島で雪を見ることは一年に一度あるかないかというほど珍しいそうだが、運が良いのか悪いのか、うっすらと積もった雪景色に期せずして出会うことができた。以前から関心はあったものの機会がなく、訪問は…

小金井公園内の「江戸東京たてもの園」を訪ねる

久しぶりに、小金井公園の中にある江戸東京たてもの園を訪ねた。現役の頃、この近くに職場があり、小金井公園はよく足を運んだ場所である。仕事の合間にテニスを楽しんだこともあれば、天気の良い昼休みには同僚と散歩をした。とりわけ桜の季節は格別で、吉…

河野龍太郎著『日本経済の死角-収奪的システムを解き明かすー』を読む

日本がバブル景気に沸き立っていたのは、今から約40年前である。当時はエズラ・ボーゲルが1979年に著した『Japan as Number One』が現実になったかのような高揚感が社会を覆っていた。しかし、脆弱な基盤の上に築かれたバブルは、1990年代半ばにはもろくも崩…

デビッド・A・シンクレア, マシュー・D・ラプラント著『LIFE SPAN 老いなき世界』を読む

暮れにNHKスペシャル「ヒューマンエイジ 人間の時代 第5集 不老長寿」を見て、正直驚かされた。一つは、「人間の寿命や老いにどこまで介入してよいのか」という倫理的な観点から、もう一つは、生命科学がここまで来たのかという驚きである。番組の冒頭では、…

三鷹の「国立天文台」を訪問する

三鷹天文台は、天体好きの少年にとって憧れの場所であろう。子供の頃の東京では、今よりも多くの星が見え、ミルク色に輝く天の川を眺めるたびに、なぜ星は一様に散らばっていないのだろうと不思議に思った。望遠鏡があれば、もう少し詳しいことが分かるので…

佐藤雫著『残光 そこにありて』を読む

小栗忠順(おぐりただまさ)ほど、生前の行動と死後の評価が大きく揺れ動いた人物は多くない。幕末という激動期において、彼は旗本として将軍家を守る義務を負いながらも、同時に近代国家形成の基礎となる施策を推進しようとした。その二重の要請の狭間で模…

外交と戦後復興の舞台――旧吉田茂邸を訪ねて

初冬の訪問 初冬の寒空の日、私は旧吉田茂邸を訪れた。いまや彼の名を即座に思い浮かべる人は、決して多くはない。団塊の世代と呼ばれる私たちにとっても、小学校に上がるか上がらない頃に首相だった人であり、記憶はほとんどない。すでに歴史上の人物となり…

きらびやかに送る──藤ノ木古墳の被葬者と副葬品の世界

旅の締めくくりに訪れたのは、橿原考古学研究所附属博物館であった。ちょうど秋季特別展「きらびやかに送る ― 国宝・藤ノ木古墳出土品修理事業成果展 I」が開催されていた。藤ノ木古墳は奈良県斑鳩町に所在する6世紀後半築造の円墳で、直径は約48メートルに…

キトラ古墳ーー東アジアの宇宙観を石室に凝縮した終末期古墳の結晶

キトラ古墳の発見は、静かな明日香の地に突如として驚きを呼び起こした。1983年、石室から壁画が確認されたという報は、研究者たちの心を強く震わせた。すでに高松塚古墳の壁画発見から十年が経過しており、「第二の壁画古墳」として紹介されたキトラ古墳は…

石と水と祈り――酒船石紀行

飛鳥宮跡の見学を終え、昼食にはまだ少し早い時刻だったので、近くの丘陵へ足を向けた。そこに佇むのは、古来より「酒船石」と呼ばれる不思議な巨石である。表面には複雑な溝と窪みが刻まれ、まるで液体が流れる道筋を描くように設計されている。かつては濁…

飛鳥宮──古代国家の原点

飛鳥を歩くと、そこかしこに古代国家の痕跡が息づいている。なかでも今回訪ねた飛鳥宮跡は、日本古代国家の原点として知られる場所である。その舞台であった飛鳥宮は人々の心に今も残る「ふるさと」であり、古来、数多くの歌に詠まれてきた。奈良県立万葉文…

石舞台古墳を訪ねて

ここで紹介するのは、石舞台古墳である。地表にむき出しとなった巨大な石組みは、見る者に圧倒的な存在感を与え、古来、さまざまな物語や伝承を生み出してきた。まずは、その中でもよく知られるものをいくつか拾ってみたい。地域に残る伝承 この古墳には、地…

精緻な石組みに息を呑む――飛鳥・岩屋山古墳を訪ねて

この日は、今年のなかでも指折りの好天に恵まれた。空には雲ひとつなく、初冬の冷たさを和らげるようにやわらかな陽光が体を包み込む。奈良盆地東南の端、古代国家成立の舞台となった飛鳥が、今日の目的地である。旅の起点は飛鳥駅。電車が到着するたび、バ…

地震崩落が守った古代の記憶――黒塚古墳を訪ねて

雲一つない晴れ空の下、古代に生きた人々へ思いをはせながら、古墳巡りを続けた。ここで、前回触れたオオヤマト古墳群について改めて整理しておきたい。この古墳群は奈良盆地東南部に広がり、古墳時代前期を代表する遺跡群である。築造時期は3世紀末から4世…

古墳時代の始まりを告げる『纏向古墳群』

奈良盆地の東南部には、ゆるやかに盛り上がる丘状の地形が点在している。しかし、その多くは自然の造形ではなく、古代社会における権力の証として築かれた古墳である。弥生時代末期、唐古・鍵遺跡に営まれたムラが衰退すると、より複雑な階層構造を備えた「…

奈良盆地に立ち上がる弥生の記憶:唐古・鍵遺跡を訪ねる旅

11月末の穏やかな晴天に恵まれた週末、奈良盆地南部を訪れた。弥生時代から飛鳥時代にかけての遺跡を巡る旅である。半世紀以上前、就職したばかりの頃にも旅をした記憶がある。しかし当時は歴史の知識も乏しく、ただ「見るだけ」で通り過ぎてしまった。退職…

国営昭和記念公園へ、紅葉狩りに行く

長く居座った夏、そして、急ぎ足で訪れた冬。今年の異常気象に、四季の豊かさに恵まれた日本はいったいどこへ行ってしまったのか――そんな疑問が胸をよぎる。その影響か、熊が、ためらいもなく人間の生活圏にまで姿を現すようになった。そんな不穏な気配が広…

北山忍著『文化が違えば、心も違う?──文化心理学の冒険』を読む

ずいぶん前のことだが、ある娯楽番組の冒頭で、出演者の芸能人たちがそれぞれ自分の名前を名乗ったあと、アナウンサーが「TBSアナウンサーの〇〇です」と自己紹介した。それを聞いた私は「なんだか変だな」と思い、隣にいた妻にそう告げた。すると彼女は「ど…

論文『印象派と浮世絵の共鳴』を、パワーポイントでの作図から生成AIで作成する

論文の作成方法は人それぞれだと思うが、私の場合は、まずパワーポイントで図を描くことから始めている。特に、論文の主旨を最も端的に表現していると思われる図を(できれば)複数作成するよう心がけている(もっとも、図の作成が難しい場合は、表やリスト…

東京の地下にひらかれた治水空間――神田川・環状七号線地下調整池を訪ねて

東京の治水対策の実際を知ろうと思い、新宿から地下鉄丸ノ内線で中野坂上まで行き、支線に乗り換えて終点・方南町近くにある調整池を訪ねた。都市部では地表がコンクリートに覆われているため、大雨の際には水の逃げ場がなくなってしまう。そのため、空き地…

生成AIとの協働により、紀行文「横浜市北部の西方寺の曼珠沙華残照」を作成する

昨日、用事のついでに、横浜市港北区新羽町にある西方寺を訪れた。曼珠沙華(彼岸花)の名所として知られるこの寺も、すでに花の盛りを過ぎているのではないかと案じつつ、静かな境内へと足を運んだ。現地での印象をもとに、私は生成AIにいくつかの情報を与…