bitterharvest’s diary

A Bitter Harvestは小説の題名。作者は豪州のPeter Yeldham。苦闘の末に勝ちえた偏見からの解放は命との引換になったという悲しい物語

たましん美術館に企画展「浮世絵 歌川広重《名所江戸百景》」を鑑賞に行く

毎日、毎日、暑い日が続いて、あまり外に出ていく気になれないが、歌川広重の展覧会がそろそろ終わりに近づいてきたので、思い切って出かけてみた。訪れたのは、たましん美術館である。中央線の立川駅から10分程度のところにある。立川駅前は綺麗に整備され…

斎藤幸平さんの『ゼロからの『資本論』』を読む

若いころは希望の国に思えたアメリカの昨今の厳しい分断を見ていると、どこかに構造的な欠陥があるのではないかと疑いたくなる。アメリカは、資本主義と民主主義とを最良の姿で実現した国と思われていた。しかし、今日大きくそれが揺らいでいる。19世紀に資…

アインシュタインの理論に挑む

19世紀の物理学は、力学を扱うニュートンの理論と電磁気学のマクスウェル理論との間に生じた矛盾に困惑していた。これを解決したのが稀代の天才と言われるアインシュタインである。彼は光の速度は一定であるという仮説を立てて、相対性理論を確立した。今回…

周回軌道を描くためには、どれだけの速度で飛び出せばよいのか?

高校の時に出された物理の問題の中でいまだに頭に残っている課題がある。「ロケットが地球の周りを巡るようにするためには、(地上の高所から)水平方向にどれだけの速度で発射すればよいか」という問いである。ロケットの遠心力が地球からの引力と釣り合うよ…

神奈川県立歴史博物館で特別展「かながわへのまなざし」を鑑賞する

今年のように暑い夏は、冷房の効いた博物館に逃げ出すのも一つの方策である。神奈川県にあるいくつかの博物館では、なぜかペリー提督来航に関連する展示が目立った。煙を吐く黒船を見て江戸市民は肝を冷やしたはずで、この疑似体験で夏を涼しく過ごして欲し…

風にめげずに同じ位置に落下するには

今年の夏はとても暑く、家から駅へと歩く短い時間でも、かなりの体力を奪われてしまう。このため、日中は本当に必要な時以外は家から出ず、早朝の散歩だけにとどめている。しかし、お盆を過ぎると流石に朝方は涼しさが感じられるようになり、頭の体操に勤し…

お買い物計算

あるグループで雑談しているときに、インド人は2桁の掛け算ができるらしいということが話題になった。その時、「私もできるかもしれない。」という人が現れた。「お買い物計算を利用すればよいのよ。」ということだった。「試しにやってみましょうか?」とい…

沢木耕太郎著『深夜特急』を読む

友人が沢木耕太郎さんの本が面白く、すべてを近く読破しそうだと伝えてきた。私は現代作家にはあまり興味はなく、名前を聞いた程度の認識しかなかった。おそらく、三島由紀夫さんまでが限界で、それ以降の作家の本はほとんど読んだことはない。しかも、三島…

鹿毛敏夫著『世界史の中の戦国大名』を読む

いきなりだが、下の図(Wikipediaから)は、ヨーロッパ人が描いた戦国時代の日本の地図である。当時のヨーロッパ人が極東の日本に対してどのような認識を示していたかを示す貴重なもので、ここからはヨーロッパと日本の各地との交流の度合いも推察することがで…

デヴィッド・グレーバー&デヴィッド・ウェングロフ著『万物の黎明』を読む

早朝に目覚めてふとスマホの画面に目をやると、BBCのBreaking NewsでJoeが大統領選から離脱すると報じていた。13日にはDonaldに対する銃撃事件があり、短い期間に、世界の方向を変えかねない大きな事件が続いた。このような事件があるたびに、政治・経済・社…

横浜市歴史博物館で「サムライ Meets ペリー With 黒船  海を守った武士たち」を見学する

1854年という年は横浜にとっては特別な年なのだろう。この年の西暦3月31日(和歴3月3日)に日米和親条約が当時の武蔵国久良岐郡横浜村字駒形(神奈川県庁・横浜開港資料館の付近)で締結された。一寒村に過ぎない横浜が歴史的な場所になった瞬間である。条約を締…

若い番号の新千円札を見ました

3日に新しい日本銀行券が発行された。20年ぶりの改刷だそうで、この日は新札を求めて銀行の両替機の前には列ができたようである。私自身が新札を手にするのはしばらく後になる事だろうとあまり関心も示さないでいたら、思いがけず翌日に実物を見る機会を得た…

松本の博物館・美術館を訪ねる

旅行5日目で最終日、市街の東と西にある博物館・美術館を見学の予定である。その間は5km近く離れていて、往復すると10kmになる。この距離だと公共の交通機関をうまく利用したくなる。嬉しいことに、松本市は観光客のために松本周遊バス「タウンスニーカー」…

松本市内の博物館・歴史的建造物を見学する

4日目は松本城の見学だけではない。その周辺にある博物館や歴史的建造物も訪れた。それは下図のとおりである。 松本駅から松本城へ向かうときに伊勢町通りを利用した。道に沿って人工的な小川があるのを見つけ、巧みに水を流している仕組みに感心した。道の…

国宝・松本城を見学する

旅行4日目。この日の第一の目的は国宝の松本城を見学することである。同級会でクラスメートに、2年生の遠足で松本城へ行ったでしょうと尋ねてみたら、覚えている人はいなかった。この記事を書くにあたって、誰も知らなかったので不安になり、手元にあった卒…

北信で高野辰之記念館・中山晋平記念館を訪ねる

旅行3日目。中学時代のクラスメートと小学唱歌で知られる高野辰之と童謡・新民謡で知られる中山晋平の記念館を訪ねた。クラスメートの中に音楽好きの人がいて、訪れた方が良いというので、それではということになった。高野辰之記念館は、飯山と中野の2か所…

十日町市博物館であまたの国宝土器を鑑賞する

さて、今回の旅行の本命中の本命、国宝土器の見学である。縄文時代の遺品で国宝に指定されているものはそれほど多くなく、土偶5体とここ笹山遺跡出土の深鉢形土器だけである。土偶は個体ごとの指定である。しかし、深鉢形土器は笹山遺跡で発掘された土器類の…

国宝満載の十日町市博物館・常設館を訪れる

旅行に出て2日目。この日は忙しい。同級会があるホテルまで移動しなければならないが、途中、十日町市によって火焔型土器を見学しようと思っている。馬高遺跡のものは重要文化財であったが、ここは国宝である。新潟県で唯一国宝に指定されているのは、笹山遺…

新潟県立博物館と長岡・摂田屋地区を訪れる

馬高博物館を見終わり、次の見学場所は新潟県立歴史博物館である。徒歩で15分ほどのところだが、1時間近くも見学した後での荷物を引っ張りながらの歩きだったので、はたからはととぼとぼと歩いているようにきっと見えたことだろう。もう歩くのは嫌と感じ始め…

火焔土器を鑑賞するために長岡市・馬高縄文館を訪ねる

前回の記事で説明した建長寺を訪れる前日まで、実は、新潟と長野を旅行していた。身近な人から遊びまわっていると言われかねないのだが、暑くないこの時期にできるだけ色々なことをしておこうと思い、機会をとらえては行事に参加したり、自分で作ったりして…

鎌倉五山第一位の「建長寺」を見学する

天気がなかなか定まらないこの時期に、外での活動が楽しいものになるかならないかは、運次第ということになる。かつては雨が降ると、あなたが雨男/雨女だからと、責任のなすりあいをして、憂さを晴らしたものである。天気予報の精度があがり予測が大きく外れ…

飛鳥時代の復元倉庫を見学する

川崎市高津区に古代の高床倉庫が復元され、先日「橘樹歴史公園」として公開された。最寄り駅はJR南武線の武蔵新城駅だが、1.6kmほど歩かないといけない。バスだと、JR南武線・東急東横線の武蔵小杉駅と東急田園都市線の鷺沼駅を結んでいる路線を利用し、影向…

藤沢宿を散策する

藤沢は、東海道五十三次の一つの宿場であるとともに、鎌倉、八王子、大山、厚木へと分岐する交通路の結節点でもある。そして、江戸、京、箱根、大山などへの旅行客で賑わった。現在の繁華街は駅周辺だが、江戸時代は遊行寺近くの宿場街であった。変化の様子…

横浜・長津田に旗本の菩提寺を訪ねる

退職してすぐのころに、知人に誘われて大分県を訪れた。その時に紹介された方々が、私の実家はXX藩の家老だった、私のところはYY藩の家老の末裔、私もまた同じなどと紹介され、大分県にはこんなにもたくさんの家老の子孫の方々がいるのかと驚かされたことが…

鯛と野菜のオーブン焼き

時々行く大量仕入れの安売り店で、鯛を丸ごとしかもとても安い値段で売っていたので、夕食に使おうと思って購入した。当初は、オーストラリアの友達から教わった、素晴らしいほどに手抜きのオーブン焼きにしようと思っていたが、料理をする時間に余裕があっ…

新宿歌舞伎町で大歌舞伎を鑑賞する

新宿の歌舞伎町で歌舞伎を鑑賞した。歌舞伎が演じられるのは、銀座の歌舞伎座だろうと言われそうだ。確かに、町名は歌舞伎となっているが、古典芸能の歌舞伎のイメージはなく、憂世を浮世にしようとする「かぶきもの」で溢れている繁華街のイメージが強い。…

神奈川県立歴史博物館で「近代輸出漆器のダイナミズム」を鑑賞する

神奈川県立歴史博物館で「近代輸出漆器のダイナミズム」が開催されている。3月には横浜市歴史博物館で「ヨコハマの輸出工芸展」が開催された。神奈川県での主要な二つの博物館がほぼ同時に輸出工芸品を取り上げたのには何かわけがあるのだろう。横浜が開港…

横浜・山手の西洋館を訪ねる

中学校の同期の仲間たちで、歴史散策と称して都内近郊の景勝地を定期的に訪れている。今回は、横浜の山手・山下地区にバラを見に行こうということになったので、その下見に出かけた。この地域を、いかにも横浜らしいハイカラな街と感じている人も多いだろう…

津軽・弘前を旅するー明治時代の建物

シリーズ「津軽・弘前を旅する」の記事は、近代化を象徴する建物で締めくくることにしよう。まずは経済の血液ともいえる金融の分野、その中で中核をなす銀行から始めることにしよう。もうすぐ、渋沢栄一が新一万円札になって登場する。銀行には、一万円札を…

津軽・弘前を旅するー武家屋敷街

弘前城の北には、江戸時代の趣を残した中・下級武士の屋敷街がある。そして、そこには武家屋敷が4軒ほど保存されている。この地域は、「弘前市仲町伝統的建造物群保存地区」と呼ばれ、昭和53年(1978)には、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。広さ…